人材派遣会社マネージャーに聞く、自社求人サイト運営のリアル|成功と失敗の本音
当サイトには、人材派遣業を営むお客様から「人材派遣に適した求人サイトを作りたい」というご相談をよくいただきます。
今回はその参考として、実際に派遣会社で求人サイトを運営してきたマネージャーに、構築の経緯から運用上の苦労までを伺いました。
自社のクライアントではなく社外の方に取材することで、求人サイトを発注する側の率直な声──制作会社への要望、運用してわかった成功と失敗──をそのまま記録しています。
これから求人サイトを作ろうとしている派遣会社の方はもちろん、派遣会社向けのサイトを請け負う制作会社の方にも参考になる内容です。
※本インタビューは2019年11月に実施したものを、JOB-PLACEのフルリニューアル(派遣モード搭載)に合わせて再掲載しています。
インタビュー対象
メディア関連の人材派遣会社でマネージャーを務めるK・Nさん(30代男性)。某クラウドソーシングでアポイントを取り、匿名を条件にご協力いただきました。
普段は約70名の登録者をマネジメントされており、派遣業の知識が豊富なだけでなく、求人サイトの運営にも携わった経験から、JOB-PLACEのサービス内容にも理解を示していただけました。
遠方のためのやり取りとなり、こちらから送った質問に文面で回答いただく形式を取っています。
求人サイトを作ったのは取引先に貢献するため
──求人サイトを作ろうと思った理由・きっかけを教えてください。
3年ほど前から、弊社の取引先であるメディア関連企業(テレビ局、ラジオ局、イベント会社など)の担当者から、「人がいなくて困っている。誰か派遣してほしい」という声が増えてきました。
あるイベント会社では、仕事を受注したにもかかわらず人手不足で現場が回らず、イベントが大失敗してしまった事例もあります。こうした事情を踏まえ、取引先に貢献できるサイトを作ろうと考えました。
──どのような求人サイトを作りましたか?
WordPressを使った自社オリジナルのサイトです。実際の制作は外注に依頼し、委託先の業者とヒアリングを重ねながら作り込みました。
ただし、リクナビやdodaのような求人ポータルサイトというよりは、「求人機能のある会社サイト」と表現したほうが正確です。
※注釈:「求人サイト」という表現は求人ポータルを指すことが多いため、以下では“自社サイト”として質問しています。
──自社サイトで用意している求人機能を教えてください。
主にサイト上の申し込みフォームが人材獲得の機能を担っています。フォームを通じて、派遣スタッフとして働いてくれる登録者を募る形です。
弊社は派遣先をテレビ局・ラジオ局・イベント会社などメディア関連企業に絞っているため、申し込みフォームには「興味のあるジャンル」「得意分野」「過去に制作したコンテンツ」などを記載してもらいます。
派遣先から「こういう人材を求めている」と連絡を受けたら、リクエストに該当する登録者をこちらから提案する──そんなマッチングの流れになっています。
サイトの制作費は割高であり、時間もかかった
──自社サイトを作った際の金額と期間を教えてください。
制作費は60万円でした。文字修正など簡単な変更は自社で行い、画像・動画の差し替えや新機能の追加が必要な場合は外注先に依頼しています。
外注側で負担の大きい変更については、その都度見積書を発行してもらい、別途費用が発生する契約です。
──制作費についてどのような感想をお持ちですか?
サイト経由の求人・申し込みが少ないことを考えると、割高だったと感じています。
依頼先が求人サイト制作に特化した会社ではなかったため、こちらの要望と仕上がりが食い違うことも多く、納品までかなりの労力がかかってしまいました。
担当者の対応も、納品前と納品後でかなり差があると感じました。こちらの成果を気にする様子はなく、「作って終わり」というスタンスが見え隠れしたのは不満です。
依頼前は見積もりや仕様について頻繁に連絡をくれたのに、納品後はリクエストへの返信が遅くなるなど、手のひらを返された感がありました。
サイトからの申し込みは少ない
──集客はどのようにしていますか?
主にSNSを利用しています。弊社の派遣経験がある人材に、FacebookやXで現場の体験談を拡散してもらい、「興味のある人はご連絡ください」という形で弊社の問い合わせ先をリンクしてもらっています。
──派遣社員が集客に携わるのは珍しいのでは?
登録者がメディアに出演する案件が多く、セルフプロモーションを兼ねて本人が投稿・拡散しているのです。弊社スタッフはその投稿を自社SNSで拡散する後方支援の立場をとっています。
このやり方で多くの登録が集まるだろうと期待していたのですが、結果は期待通りにはいきませんでした。
──サイトからの申し込みはありますか?
正直、かなり少ないです。むしろ登録者のSNSを経由して申し込まれる方が多く、オウンドメディアとしての自社サイトの力不足を感じています。
SNSでは表現できない「深く濃いPR記事の作成」が課題ですが、人材不足で自社スタッフがWebでのPR活動まで手が回らず、それに特化した人材を雇う予算もなく、手詰まりの状況です。
──効果がないので止まっている、ということですか?
Webに力を入れたのに効果がほとんど出なかったため、改めてここに人材を割くのは社長としても避けたいようです。現在のサイトは作りっぱなしのまま放置されており、生かさず殺さずの状態です。
予算があればもっとWebを活用したい
──仮に必要な人材や予算があれば、やってみたいことはありますか?
はい。社長は新サービス構築に否定的なのですが、「予算がつくならこうしたい」という構想は私なりに持っています。
現在のサイトは「応募するならご自由にどうぞ」という受け身のスタンスに終始しています。そこから二歩も三歩も踏み込んで、「弊社に登録するとこういう未来が描けます」と伝えられる形にしたい。
実際に活躍している派遣スタッフを動画で紹介する、といった案も温めています。
──実際に御社で活躍している派遣スタッフは、サイトから登録された方ですか?
いいえ、Webとは関係なく求人雑誌を見て応募してくれた方です。彼女いわく、「ページの冒頭にあった『子育てしながら働ける』という文言に惹かれて応募した」とのことでした。
こういう動機で応募してくれる方がいるのですから、Webでも同じようにPRできれば効果的なのではと考えています。
コミュニケーションが取れる制作会社が必要
──サイト制作を依頼した業者に不満があったとのことですが、どのようなサポートをお求めでしたか?
もちろん、無償で永久にサポートしてほしいとは思っていません。リクエスト内容によっては追加料金が発生するのも当然です。
ただ、納品後のサポートについて事前にもっとコミュニケーションが取れていれば、と感じています。サポート回数や期間、有償・無償のラインが明確であれば問題はなかったはずです。
しかし、そういう取り決めをせずに「○○の修正をしてほしい」と連絡したら「それは別料金です」と言われ、その時に初めて有償だと知ったのです。
一方的に「納品後も細やかなケアをしてもらえる」と思い込んでいたので、弊社にも不手際があったと反省しています。
──業者とのコミュニケーションはどんな方法を望みますか?
電話よりメールを好みます。電話はどうしても時間を取られるので、返信に融通のきくメールのほうが助かります。
ただし、対面で話したほうが行き違いも減るので、「基本はメール、具体的な話は直接会ってから」というスタンスです。
──お話を伺っていると、コミュニケーションをかなり重視されているように感じます。
そうですね、強く意識しています。制作物自体は、よほど粗悪でない限り許容できます。極端に言えば、一定の技術があればサイトは作れるはずです。
それよりも制作過程や納品後の対応のほうが重要で、いかに気持ちよく仕事ができるかが大事だと考えています。長い関係性を築きたいので、受発注の立場に関わらず密なコミュニケーションを取れたらと思います。
しかし、コミュニケーションを重視する制作会社は少ない。以前、別のWeb制作会社に相談した際は「それぐらいは自分でやってください」と冷たく突き放されたこともありました。
こちらの相談内容が不明確だったのかもしれませんが、それでも少々こたえました。
デザインや機能は最低限で、サポートを厚くしてほしい
──当方では常々、求人サイトの構築は最低限の予算で行い、残りを集客やサポートに充てるべきだと啓発しています。どう思われますか?
私も同感です。特に部長・社長クラスの方は「サイトを作ればどうにかなる」と思っている節があります。サイト制作自体がゴール化していますが、本当の目的は求人登録を集めることのはずです。
機能を厳選してシンプルに作り、低予算でスタートし、アイディアで人を集めることが大事です。そのうえで、集客のノウハウまで伴走してくれるWeb制作会社があれば、本当に心強い。
私はサイト運営担当として、納品後に「これからどうしたらいいのか…」と途方に暮れた経験があります。他社の失敗例・成功例を教えてくれるだけでも救われたはずです。
担当者の悩みに寄り添ってくれるWeb制作会社があれば、私は迷わずそこを選びます。サポートに限界があるのは承知の上ですが、難しいからこそ価値があるのではないでしょうか。
「人が集まって登録数が伸びる」というゴールに向かって伴走してくれる存在は、何より貴重です。
人材派遣業界の今後について
──人材派遣業界ではITやWebは頻繁に活用されていますか?
ITを使える人と使えない人の「差」が激しくなっていると感じます。テクノロジーに慣れている人は新サービスを自ら試していますが、若い世代でも不慣れだったり関心がなければまったく活用できていません。
これは派遣業界特有というより、どの業界にも共通する現象です。パソコンが苦手な人は確実に増えている実感があり、スマホのフリック操作だけで完結する生活が広がるなか、ブラインドタッチができない、長文が書けない、という人も増えています。
サイトを運営・保守できる人材が少ないのは、こうした背景もあるかもしれません。
──派遣業界の今後についてはどのようにお考えですか?
大切にすべきは採用人数より定着率だと思います。採用してもすぐ離職されては意味がなく、余計なコストがかかるだけです。「条件が合えば誰でもいい」というスタンスはやめ、企業側が求める人材像を具体的に伝えるべきです。
求人を取り巻く環境もすでに変化しています。労働人口の減少、働き方の多様化、派遣で働くモチベーションの変容──人々の価値観が変わるなか、派遣会社もそれに対応していく必要があります。
人材不足が叫ばれる今は、人材を「囲む」のではなく「流動させる」ことがポイントだと感じます。多様な方に派遣として働いてもらうためにも、SNSや求人サイトを上手く活用していく必要があるのではないでしょうか。
今回のインタビューを経て
──最後に、求人サイトを作ろうとしている方に伝えたいことはありますか?
ひと言で言えば「人材派遣会社の担当者の気持ちに寄り添える制作会社を探してほしい」ということです。
私の立場では、たくさんの人に派遣スタッフとして登録してもらうことが至上命題です。派遣する人材がいなければ仕事は成り立ちません。だからこそ、サイトの機能やデザインよりも「人が集まるかどうか」が重要で、その点を一緒に考えてくれる制作会社・担当者が必要だと思っています。
もちろん制作会社は複数の案件を抱えており、弊社はその一つに過ぎないかもしれません。それでも、こちらからの連絡にきちんと返信があるだけで、救われる気持ちになるはずです。
弊社としても、事前の打ち合わせ不足という反省点があります。もしサイトをリニューアルできる機会があれば、まずは担当者に弊社の悩みと問題点をしっかり伝えることから始めようと思います。
人材の登録があったときに一緒に喜んでくれるような制作会社があれば、私は迷わずそこに発注します。デザインや機能は最低限でいいので、サポート体制を厚くしてもらえることを望みます。
この記事を読んでいる方も、「自社で本当に必要なものは何か」を見極めたうえで、求人サイト構築の依頼先やツールを選んでいただければと思います。
──ご協力ありがとうございました。Web制作会社への提言も含め、今後の求人サイト構築サービスに役立てていきたいと思います。
編集後記
本インタビューを2026年現在の視点で振り返ると、人材派遣を取り巻く事情はこの数年で大きく変わりました。
派遣社員と正社員との不合理な待遇差は禁止され、派遣会社の説明義務も強化されています。
さらに2026年10月からは、待遇差の内容や理由について説明を求めることができる旨を、派遣労働者本人に明示する義務も加わりました。
派遣社員の待遇を正社員に近づける方向へ法律が大きく動いた以上、派遣会社が運営するWebサイトのあり方も変わっていく必要があるはずです。
求人募集のページにも、待遇に関するより透明性の高い情報設計が求められていくでしょう。
求人サイト構築パッケージ「JOB-PLACE」は、今回のフルリニューアルにあたって派遣モードを搭載し、派遣会社様のご要望にお応えできる仕組みを整えました。
これからも市場の声に耳を傾けながら、求職者と企業のマッチングを支える皆さまの一助となれるよう努めてまいります。
