これから求人サイトを作りたいと思う方に、「ユーザーは求人サイトで何をしていると思いますか?」と聞くと、ほとんどの方が「就職先を探して求人応募するんでしょ?」と答えます。
求人サイトの目的としてはその通りなのですが、ユーザーの使い方を調べている内に「それだけではない」ということに気づきました。ただ求人応募するだけでなく、別の目的で利用することできるのです
そこで今回は求人情報の検索や求人応募と言った通常の使い方とは別に、「こんな使い方があるの!?」と思うような求人サイトの活用方法についてご紹介します。
企業調査に役立てる
今や自社サイトを持っていない企業は少ないです。Web制作会社に頼んで見栄えの良い、情報量が豊富な自社サイトもあれば、無料サービスを使って会社概要だけ公開しているサイトもあります。
しかし、サイトの規模に限らず自社サイトだけ見ても本当にその企業が存在するのか?今も活動しているのか分からない時があります。休眠会社でサイトだけ持っているということもあるでしょう。
特に「お知らせ(ニュース)」や「プレスリリース」のコンテンツが何年も更新されていないようなサイトだと、企業活動が見えません。問い合わせをしても取り次いでくれるのか不安になります。
だからといって怪しい企業かといえばそうとも言えません。単にネットが苦手だったり、更新する人手が足りなかったりで、放置しているケースも多いのです。(お恥ずかしながら当方の事業サイトも頻繁に更新していません…)
それが求人サイトで求人情報を掲載していたらどうでしょうか?少なくとも人材を欲しているということは企業活動していることの証明になりますので、企業の存在が把握できます。
また、求人情報は基本的に掲載期限が決められています。2週間とか4週間の期限内で掲載されるので、新しい求人情報であればあるほどその企業は存在しているということになります。
そして有料求人サイトを利用しているということは雇用にお金をかけているということがいえます。人材の重要性を感じていない企業や倒産寸前の企業は雇用にお金をかけません。
※まれに大手企業などで経営破綻寸前でも、求人募集している会社もありますが・・。
ですので、取引先の企業や外注先の企業に対する信用調査の一環として「求人サイトを利用しているか?」というのは大いに判断材料になります。
他の求人サイトと差異がないか調べる
通常はひとつの求人サイトで人材募集を行いますが、より多くの人材確保のために複数の求人サイトを利用している企業もあります。
求人サイトそれぞれで特長や傾向、強み・弱みが異なるので、複数の求人サイトを利用すること自体はおかしなことではありません。むしろ複数利用してどこが自社に合っているか調べてほしいと思います。
しかし、それはあくまで管理できる場合です。複数の求人サイトを使ってもちゃんと求人応募を管理して面接の調整をつけ、きちんと採用活動が行える企業のみ複数求人サイトを使っても良いと思います。
そうではなく、複数の求人サイトで求人募集をしているのに管理できない企業もあります。そればかりか、募集要項や条件が求人サイトごとに違っている場合もあります。
なぜそういうことになるのでしょうか?企業側に悪意があるか否かうんぬんよりも、求人サイトに任せきりなのが原因です。求人サイトに任せて自社で対応していないと、このような差異が生まれがちです。
特にネットが不得意な企業にその傾向があります。ネットの使い方がわからず、求人サイトの営業マンに言われたまま求人募集をして、それが複数になり、AサイトとBサイトで差異が生まれてしまいます。
ですので、求人サイトで人材募集をしている企業を調べる際は、ひとつの求人サイトだけでなく、複数の求人サイトを調べて、他にも掲載していないか確認しましょう。
たとえ複数の求人サイトを利用していたとしても、その募集要項や条件に差異がなければ、きちんと求人管理ができている企業だという目安にもなります。企業に対する信頼性にもつながるでしょう。
面接の参考にする
求人サイトを見ることは面接時の参考にもなります。大体の求人サイトではその企業がどんな人材を必要としているか紹介しているので、コメントから求める人材を参考にできます。
面接先の企業だけでなく、同業他社の募集内容も参考になります。面接先の企業は自社のことをわかっているので、そのことについて面接で触れてもあまりインパクトはありません。せいぜい「勉強してきてる」と思われるぐらいです。
※もちろんそれは大事なことですので、面接先の求人情報は繰り返し見て、その企業が求める人物像を把握しておくのは必要です。
しかし、同業他社や関連しそうな企業の募集も調べることで、面接官が気づきにくい点をアピールすることができます。特に面接の最後の方にある「何か聞きたいことはありますか?」といった応用力を求められる場面で有効です。
例えばあなたがWeb制作会社の面接にWebデザイナー募集で応募したとします。Webデザイナーですから、当然デザイン関係の質問をされるわけです。ポートフォリオなど作品集の提出も要求されるでしょう。
その時に「Gitは利用されていますか?デザインの管理やスタッフ間での連携はどうされていますか?」と質問すれば、このデザイナーは対人関係を想定しているとして、協調性を感じます。
※Git(ギット)とは、プログラムのソースコードなどの変更履歴を記録したり追跡して管理するための、分散型バージョン管理システムです。
少なくとも筆者は感じますし興味を持ちます。なぜならGitやバージョン管理は主にシステム開発会社で導入されており、デザイン会社やデザイナーで導入することは少ないからです。
それについて興味がある・知っている・質問してくるというのは、対人関係を意識していると捉えることができますし、職種が違うスタッフ(エンジニアなど)との連携も期待できます。
このように業界特有の知識や使用ソフトなどあると思いますので、面接先のA社で書かれていなくても、同業他社のB社で書かれているようなことを質問するのは有効だと思います。
もちろん、企業が意図的に書いていない場合や利用していない場合もあります。しかしそれでも予備知識として知っていることで、面接で失敗するリスクを軽減できるのではないでしょうか。
その業界の専門知識を得る
特に業種・業界に特化した専門求人サイトに多いのですが、お役立ちコンテンツとして求職者のために仕事内容や業界の仕組みを解説しているサイトがあります。いくつかご紹介します。
・看護師の転職ノウハウ|看護roo!(カンゴルー)転職サポート
看護師を対象としたの求人サイトです。転職ノウハウとして履歴書の書き方や面接の仕方、退職交渉術などユニークな情報も公開しています。看護師の転職にまつわるノウハウを公開しているので、看護師を目指す方には大変参考になると思います。
飲食業界を対象とした求人サイトです。転職活動のポイントや飲食業界の転職事情などをブログ形式で説明しています。カテゴリ分けして、コラム・トレンド・気になるあの仕事などに分類し、独立に関する情報もあるので、先のことまで考えた情報を入手することができます。
・エンジニア・デザイナーのためのスキルアップ記事 | レバテックキャリア
IT・Web業界を対象とした求人サイトです。転職ノウハウや履歴書の書き方だけでなく、エンジニアやデザイナーのスキルアップに役立つ情報として、開発方法や便利なソフトウェアの情報などもあります。ブログ形式で公開し、多くのソーシャルブックマークを獲得しています。
これらのサイトのように、ブログ形式で専門記事を書いている場合もあれば、企業インタビューを掲載している場合もあり、求職者だけでなくその業界に興味がある方にも参考になります。
例えば当方はWeb制作業ですが、Webサイトは色んな業界のお客さまから必要とされるので、Web制作の依頼やお問い合わせがある時は求人サイトを見る時があります。
求人サイトを見ればその業界の人達が何を重視しているか分かります。お役立ちコンテンツでその業界の雰囲気や求めるものを把握することもできます。全てでないにしろ、触りだけでも学習することで、提案しやすくなります。
ぜひ積極的に求人サイトのお役立ちコンテンツから情報収集していただければと思います。
プレゼンや会議の資料として使う
業界の専門知識を得ることで、企業に対する営業活動にも役に立つと説明しました。ただ専門知識を得るだけでなく、実際のプレゼンや会議にも役立てることができます。
例えば全国で行っている求人サイトの場合、地域ごとに分けて求人情報を掲載していますが、掲載数や登録数が地域によってバラツキがあることがわかります。
当然、都市部ほど求人数も企業数も多いでしょうし、そうでない場合は低くなるでしょう。東京都でも23区内でバラツキがあると思います。新宿区や港区は多く、杉並区は練馬区は少なかったり。
地域だけでなく沿線・駅検索も参考になります。人気のある駅(東京なら新宿駅、大阪なら心斎橋駅など)にある企業とそうでない企業の違い、徒歩5分なのか10分以上なのかでもだいぶ変わるでしょう。
筆者の偏見かもしれませんが、駅から徒歩5分以内の企業は求人情報も充実して詳しい場合が多いです。逆に徒歩10分以上かかる場所にある企業は求人情報も寂しくなりがちです。
なぜなら「駅から近い」「交通の便が良い」というのは立派な就業理由になるからです。アルバイト系求人サイトなどは、駅から近いことをアピールして特集を組むぐらいです。
以下のサイトをご覧ください。
・駅から近いので通勤も便利!大手企業での営業事務の派遣の仕事情報|株式会社スタッフサービス
・駅近の求人特集|看護師求人・転職・募集情報【看護のお仕事】
このような特集ページ以外でも「駅から近い」という検索ワードで検索している人も多いです。「どこに企業があるのか?」は、求職者にとって関心が高いワードであるといえます。
また、求人サイトにある企業や求人情報の傾向を調べることで、新規ビジネスや出店時の参考になることもあります。当然、求人数が多い地域の方が競争も激しくなります。
求人サイトにはアクセスランキングや人気の求人が順位表示されている場合があります。たとえ地方であっても人気の求人情報があることで「その地域ではその企業が強い」ということを認識することができます。
このように求人サイトを細かく分析することで、プレゼンの資料やマーケティングの参考になります。
まとめ
今回は求人サイトの運営者に対する説明というよりも、求職者や一般ユーザーの視点に立って「求人応募以外の求人サイトの活用方法」についてご紹介しました。
求人サイトは情報が集まりやすいサイト形態ですので、それをただ求人活動だけで利用するのは勿体無いです。求人サイトは求職者以外の人も利用できるメディアです。
もちろん、違法行為や度を越した利用は厳禁です。採用企業に成りすまして求職者の個人情報だけ取ろうとするのは言語道断です。(規約違反だけなく、なんらかの犯罪行為にも当たるのではないでしょうか)
しかし、求人情報として公開されているものや、企業情報として公開されている情報を実際のビジネスに役立てる(参考にする)ことは悪いわけではありません。
求人情報を単なるデータとして扱うか、”企業活動の貴重な情報源”として扱うかでその価値も変わってくると思います。もしあなたが営業マンであれば、求人サイトの情報は営業活動に大きく役立つでしょう。
求人サイトは可能性が多いサイト形態です。求人サイトを構築して提供している当方としても、求人サイトをただのデータの集まりとして扱ってほしくはありません。
ビジネスツールとしてはもちろんですが、コミュニケーションの場にもなりますし、求人サイトをきっかけに人生をかえるような出会いや発見が生まれてほしいとも思います。
今後も求人サイトをただの求人応募の場としてご紹介するのではなく、世の中の役に立つサイトとして、便利な使い方を模索していきたいと思います。