起業して新しいビジネスを行う場合、事業計画書が必要になる時があります。ビジネスパートナーを募ったり銀行から融資を考えている場合、事業計画書の精度が融資の合否にも関わります。
とはいえ、起業時に事業計画書を用意している方は少ないです。当方のお客さまにも「融資を受けたいので」という理由で事業計画書作りの相談をされることはありますが、作成するのに苦労されています。
ただ、個人でもある程度の事業計画書を作ることはできます。公的機関に提出する時や融資を受ける時はその資料を元に中小企業診断士や行政書士などに依頼しても良いでしょう。
そこで今回は「求人ビジネスをはじめる上で必要となる事業計画書の作り方」についてご紹介します。できるだけ専門用語を省いてシンプルにお伝えしますので、事業計画書の作成でお悩みな方はご参考ください。
事業計画書に記載する内容
事業計画書には主に以下の内容を記載します。
- 創業者のプロフィール
- 事業の概要
- 事業の目的、ビジョン、理念
- サービスの特徴や強み
- 市場規模や競合について
- 収益化の方法、ビジネスモデル
- 構築方法やスケジュール
- 運営方法やサポート体制
- 将来の計画
それぞれ詳しく解説します。
■創業者のプロフィール
起業するあなた自身について書きましょう。事業形態が個人事業主と法人とで異なりますが、一般的には以下の項目が挙げられます。
・名前
・商号(屋号)
・所在地
・電話番号
・URL
・メールアドレス
・経歴(職歴)
URLやメールアドレスなど、事業用サイトを作っていない場合はなくても構いません。また、法人の場合は役員や主要取引先の情報もあったほうが良いでしょう。
■事業の概要
あなたがはじめようとしている事業を簡単な言葉で説明します。たとえば当サイト、JOB-PLACEなら以下のような説明になります。
このようにあなたが誰かに事業内容を説明することを想定した文章を作ります。文字数の指定はありませんが、100文字程度でまとめると分かりやすいでしょう。
■事業の目的、ビジョン、理念
なぜその事業を行うのか?ということを説明します。他人に聞かれた時にパッと応えられるような、簡潔な文章でまとめます。こちらについてもJOB-PLACEなら以下のような説明になります。
といった感じでしょうか。ポイントとしては「人材不足」「求人の需要が高い」「求人サイトは古い」「人材マッチング」「雇用改善」といったキーワードが入っていることです。ニュースでもよく聞く言葉だと思います。
これらはJOB-PLACEだけでなくあなたがこれから作る求人サイトにも当てはまると思います。求人サイトは昔から多く存在しますので、「なぜ改めて作るのか?」を問われた時に、答えられるような文章を考えましょう。
■サービスの特徴や強み
あなたの求人ビジネスに対する特徴や強みを書きます。特徴を明確にすることで、ビジネス内容を想像できるようになります。また、強みは競合他社より自身のビジネスが優れているというアピールにもつながるでしょう。
それでは求人サイトでよく使用される特徴をご紹介します。
・○○地域限定の求人を扱い、地域に密着した情報を提供している
・○○業界限定の求人を扱い、専門家に対する人材マッチングを提供している
・採用時だけ料金が発生する成果報酬型の料金システムで、企業の負担を下げ、求人広告の依頼を促進している
・採用決定者にお祝い金を贈呈し、会員登録や求人応募の促進につなげている
・求職者ひとりひとりの希望を伺った上で、最適な企業を紹介している
このようによく使用される特徴から、あなた独自の特徴や強みを肉付けしていくと書きやすいです。なお、特徴を書く時はできるだけ専門用語は避け、誰が見てもわかりやすい言葉で説明しましょう。
たとえばJOB-PLACEの特徴である「レスポンシブデザイン対応」というのも専門用語でWebに詳しくない人にとってよくわかりません。「パソコンやスマートフォンに対応したデザイン」とした方がわかりやすいでしょう。
事業計画書を提出する相手によって専門用語の有無を決め、できるだけわかりやすくビジネスの特徴や強みを伝えられるようにしてください。
■市場規模や競合について
あなたが作りたい求人サイトに対する市場規模や競合他社について分析します。分析方法については以下の記事を参考にしてください。
記事で説明しているように、マーケットリサーチを行い、どんな市場規模でどんな競合が存在するかを書きます。競合他社の名前は出さなくても構いません。
市場規模や競合を分析することで自身の強みを見つけることができ、他社と比較することもできます。そうすることで「なぜはじめたのか?」に対して説得力が生まれ、独自性をアピールすることができます。
■収益化の方法、ビジネスモデル
どのようにして収益を上げるのか?利益を出すか?を書きます。以下の記事では求人サイトでよく導入されているビジネスモデルを説明していますので、ご参考ください。
このように求人サイトのビジネスモデルもさまざまありますが、収益化の方法を書く時はすべて説明するのではなく、一番収益が期待できる方法を記載すると良いでしょう。
■構築方法やスケジュール
どうやって求人サイトを作るのか?に対する説明と構築までのスケジュールを書きます。当方のように求人サイト構築サービスを提供している制作会社に依頼する場合は、サービスの説明やURLがあるとわかりやすいでしょう。
制作会社から見積もりをもらうとともに、作業日数(納期)についても提出してもらいます。当サイトの場合は「作業の流れ」に目安を記載していますが、見積提出時はおおよそ2~4週間とする場合が多いです。
スケジュールに関しては「いついつまでに事業をはじめたい」といった予定を書きます。具体的な日にちが決まっていない場合は「2018年3月までに」とか「2018年春」でも構いません。
■運営方法やサポート体制
求人サイトの運営方法やサポート体制について書きます。起業してひとりで運営する場合、相手に不安を与えてしまうかもしれません。そこで以下のような説明が考えられます。
といった説明があれば、運営状況を想像することができます。また、複数人で運営する場合はそれぞれの役割を説明します。
■将来の計画
あなたの求人ビジネスに対して将来どうしたいか?についての計画を書きます。計画はあくまで予定であり想像上のものになりますが、将来の見通しができていることで投資家にとっても出資しやすくなります。
特に財務計画は重要です。将来どれだけ利益をあげられるか具体的な数字で説明する必要があります。こちらについては上記の「収益化の方法、ビジネスモデル」を元に考えましょう。
その他、求人サイトなら会員数や求人数の予測値も記載できると思います。これらの情報があることで、サイトがどう成長するか予測することができますし、事業者の意欲を感じることができます。
事業計画書を作成する方法
事業計画書に記載する内容を決めたら実際に事業計画書作りをはじめましょう。作り方はさまざまありますが、まずはWordやテキストエディタで簡単にまとめる程度で良いです。
上記「事業計画書に記載する内容」で説明した項目を見出しにしてそれぞれ自分の考えをまとめていきます。良い言葉が浮かばなくても構いません。「まずは書く」ということを意識しましょう。
ある程度文章化できたら、誤字・脱字のチェックをします。こちらも国語力や文章力がなくても構いません。わかる範囲でおかしい箇所はないか?失礼な言い回しになっていないか意識して校正しましょう。
もし「どうしても自分では上手く作れない」という場合、次で説明するテンプレートを利用してください。
事業計画書をテンプレートで作成する
事業計画書のテンプレート(雛形)を配布しているサイトがあります。テンプレートを使用することで、一から作成しなくても見栄えの良い事業計画書を作ることができます。
それではいくつかテンプレートを配布しているサイトをご紹介します。
■bizoceanの無料テンプレート
参考:事業計画書の書き方、テンプレート|無料ダウンロードは書式の王様
複数の事業計画書が集まるテンプレート配布サイトです。2017年10月24日現時点で381件のテンプレートが登録されています。これだけあればあなたの好みに合ったテンプレートを見つけられるでしょう。
■マイクロソフト公式の無料テンプレート
参考:事業計画書 - 無料テンプレート公開中 - Microsoft Office - 楽しもう Office ライフ
マイクロソフトが配布するExcel形式のテンプレートです。テンプレートに沿って項目を入力していくことで、簡単に事業計画書が作れます。シンプルなテンプレートですが、必要最低限の項目があるので分かりやすいです。
■日本政策金融公庫のテンプレート
国民生活の向上に寄与することを目的とする政策金融機関「日本政策金融公庫」が配布するテンプレートです。事業計画書(創業計画書)の記入例も公開しているので、特定の業界に特化した求人サイトを作る場合、参考になると思います。
事業計画書を専門家に作ってもらう
ここまでは自分自身で事業計画書を作る方法を説明しました。ここまでの説明である程度の事業計画書を作ることはできると思いますが、それでも銀行や公的機関から融資を受ける場合、不安になるかもしれません。
そういった時は事業計画書を中小企業診断士や行政書士などの専門家に依頼するという方法があります。専門家に依頼することでより精度の高い事業計画書を作ってもらうことができます。
専門家の探し方ですが、まずは地元の役所に相談します。起業した時に開業届を税務署に出しますが、その時に事業相談をすることができるので、事業計画書を作ってくれる業者を聞いても良いでしょう。
もちろんネットでも受け付けている業者があります。Googleで「事業計画書 代行」「事業計画書 作成 代行」などで検索すると、サービスとして代行してくれる業者を探すことができます。
各業者によって料金もまちまちですが、サイトやサービスを見てあなたの予算に合った、信頼のおける業者を探していただければと思います。
ただし、専門家に依頼する場合でも「事業計画書に記載する内容」で説明したようなことは聞かれます。ですので、ある程度は自分で考え、決めるようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?自分で事業計画書を作るのは難しいですが、事業計画書に必要な項目をひとつひとつじっくり考えていくことで、だいぶ書きやすくなったのではないでしょうか。
あらためて自分のビジネスを言葉で説明しろと言われても難しい時があります。筆者はサイト制作をする時に「どんな事業をしているのですか?」とお客さまに尋ねるのですが、言葉が出てこない方が多いです。
「お客さまの髪を切っている(美容室)」「ラーメンを提供している(ラーメン屋)」「体のケアをしている(エステ)」といったことは説明できても、詳しくサービス内容を言葉で説明するのは難しいです。
しかし、起業する時や新規ビジネスをはじめる時は「なぜそのビジネスをしようと思ったのか?」といった理由・きっかけがあるはずです。それを思い出して文章化するだけで良いのです。
普段から文章を書き慣れていない方はなかなか言葉が出てこないと思いますが、難しい言葉を使わなくても、自分が思いついた言葉でまずは書いてみるのが大事です。
ただ頭で考えるだけでなく声に出してみるのも有効です。営業先でお客さまに対して言葉で事業内容を説明するので、そのデモンストレーションとして声に出して考えをまとめるのも事業計画書を作る上で役立ちます。
事業計画書があることで、銀行や公的機関への提出だけでなく、他人に対する説明もできるようになります。もちろん事業用サイトや求人サイトを作るときにも説明文として使用できます。
逆にいえば事業計画書が作れないようでは起業するべきでないかもしれません。言葉として説明できないということは、それほど事業内容が固まっていない証拠です。その状態で事業をはじめても失敗する可能性が高いです。
これから起業を考えている方、求人ビジネスに興味がある方は、まず自分の考えを整理する意味でも事業計画書を作られてはいかがでしょうか?おぼろげだったビジネス内容が具体的なものとして見えてくるようになります。