事業を行う上で求人募集する、人材を探すというというのは経営者にとって欠かせない作業です。個人事業主で全て一人で行える方なら別ですが、それでもずっと一人でやり続けるのは限界があります。
人の手を借りて一緒に人の役に立つための仕事を行う。この繰り返しが今日の社会を形成してきましたし、今後もそうやって発展していくように思います。
ただ、求人募集と言ってもインターネットを利用する求人サイトと、雑誌やフリーペーパーなどリアルを対象とした求人メディアでは、向き・不向きな業界というのが存在します。
今回は求人サイトの利用に向いている業界・業種についてご紹介したいと思います。
美容業界
美容師・理容師、エステティシャン、ネイリストなど、美容関係の仕事に就く職業は求人サイトの利用に向いています。
美容業界は主に10代~30代の若年層を対象としており、若年層に今やインターネットの利用は欠かせません。特にスマートフォンが普及してからは、誰しもがネットで情報収集ができるようになりました。
求人サイトだけではなく、ホットペッパービューティーのようにお店の紹介やサービスの予約ができるサイトも多くあり、ネットの利用に適した業界だと言えるでしょう。
そのため、美容業界の経営者はネットサービスを積極的に取り入れて、自社の顧客に対してサービスの向上に活かしているようです。
美容業界を対象としている求人サイトは以下のとおりです。
デザインやコンテンツなど、女性を意識した作り方になっているのが多いと言った印象です。
アットコスメキャリアのように美容のポータルサイトがあり、その姉妹サイトとして求人サイトを立ち上げるケースもあります。
ポータルサイトのユーザーを求人サイトに向けることが出来るので、大変有効なコンテンツ戦略だと思います。
これから美容関係の求人サイトを作るなら
上記でも述べたとおり、美容業界はネットとの親和性が高い業界ですので、既に多くの求人サイトが存在します。
そのため、同様の作り方をしていては大手の求人サイトに対抗するのは難しく、求職者を集めるのも困難です。
ただ、ターゲット層や求人サイトの方向性を限定することで、後発でも十分事業として成り立つのではないかと思っています。
例えば大多数の美容求人サイトでは女性をターゲットとしており、女性向きの明るく、淡い配色のデザインが多いです。しかしこのようなデザインですと男性は利用しづらく仕事を探せません。
しかし、美容業界に勤める男性もいます。2000年代に話題になった”カリスマ美容師”は男性でしたし、フィットネスのインストラクターやトレーナーにも男性が多く存在します。
性別の違いだけでなく、年代の違いもポイントです。美容業界は若年層を対象としていますが、高年層でも髪を切りに行くし、体のケアに関心を持つ人が多いです。
高年層が同年代の人にサービスを受けたいという需要もあるだろうし、少子高齢化・人手不足の社会で、高年層の働き口を広げるという意味でも、高年層をターゲットとする求人サイトの需要が増えるように感じます。
そうした”需要の隙間”をカバーした求人サイトを作ることで、大手の求人サイトと戦わずに、独自路線として求人ビジネスを行えるようになります。
飲食業界
居酒屋、ラーメン屋、喫茶店など人々が食事をする飲食業界でも求人サイトの利用は向いています。
特に飲食業界は多種多様な職種に分かれています。
・ホールスタッフ
・販売スタッフ
・調理スタッフ(シェフ、板前)
・技術スタッフ(バーテンダー、パティシェ)
・配送スタッフ(デリバリー)
・店長・マネージャー
など、ひとつのお店で色んな役割の人材が必要になります。
また、正社員よりもアルバイトに頼る部分が多く、学生や主婦が担うことが多いので、人の入れ替わりが激しいです。その為、常に人材を募集する必要があり、慢性的な人材不足に陥っている業界でもあります。
あなたがお住いの地域でも、常に求人募集の張り紙を貼っているお店を見かけることはないでしょうか?ファミリーレストランやチェーン店などは、人材が入れ替わることを想定し、専用の看板を作っているぐらいです。
それだけ人の入れ替わりが激しく、常に人が足りていないのが飲食業界の現状でもあります。
こちらも美容業界と同様に若年層を対象としているので、求人サイトを使い、ネットを活用した人材募集が活発にされています。
飲食業界を対象とした求人サイトは以下のとおりです。
料理や食べ物を連想させる、赤・橙系で暖かい色の配色が目立ちます。
飲食業界はパート・アルバイトで働く人が多いだけに、学生が好むコンテンツ(お祝い金やこだわり検索)に力を入れている求人サイトが目立ちます。職種(ジャンル)や地域を細かく分けて、求人情報を探しやすくしています。
求人サイトとしてはどちらかというとシンプルな作りが多いように感じます。転職系サイトのように多くの情報量で企業をアピールするよりも、シンプルに募集要項を紹介している印象を受けます。
これから飲食関係の求人サイトを作るなら
飲食業界は様々な職種・ジャンルに分けることが出来ると説明しましたが、これを更に絞って専門サイトを作るのはいかがでしょうか。
料理のジャンルひとつとっても和食(日本料理)、イタリアン、中華、韓国、アジアンなど様々なジャンルに分類することができます。
それぞれ働く環境や作業内容も異なるでしょうし、そのジャンルならではの求める人物像も異なることでしょう。
ですので、これらのジャンルを一緒くたにするのではなく、「ラーメン屋専用の求人サイト」とか「居酒屋専用の求人サイト」とか、特定の料理やジャンルに絞った求人サイトにするのはいかがでしょうか。
ジャンルだけではなく、「料理が上手になる求人サイト」として、調理・キッチンスタッフの仕事のみを集めた求人サイトを作っても面白いと思います。
「飲食業界」としてまとめた方が求人情報を掲載する企業を集めやすのは確かですが、アルバイトやパートと言った短期間労働でも、どんな仕事でも良いわけではありません。
やはり求職者自身が好きなジャンルのお店で働くことで離職率を低下させることが出来ますし、求人サイトとしての質も高めることができます。
これからの飲食系求人サイトは多種多様な職種・業態よりも「更に絞った専門サイト」が求人ビジネスの成功に繋がるようにに思います。
医療業界
医師、看護師、薬剤師、介護士、ケアマネージャーなど、医療関係の資格を持つ方が働く医療業界の求人募集も多いです。
こちらも少子高齢化の影響で介護や看護を必要とするお年寄りが増えたことにより、慢性的な人材不足に陥っています。
一人あたりの勤務時間が増えることにより、医療ミスやトラブルに発展し、度々ニュースになることがあります。事態は深刻です。
病院や介護センターなどを利用するのはお年寄りや高齢者が多く、インターネット予約などを導入しているところも他の業界と比べて少ないので、一見するとネットで求人募集は必要ないと思うかもしれません。
しかし、医療業界は専門職ですので、新卒大量採用という形ではなく、国家資格を取って研修を終えた方が行うので、中途採用のケースが多いです。
また、大変離職率が高い業界でもあるため、医療系の資格を持つ方が転職活動をする機会も多くなります。その為、求人サイトでの募集が増えるようです。
医療系の求人サイトをいくつかご紹介します。
オレンジとかブルーとか優しい感じの配色で、女性をターゲットにしているようなサイトが目立ちます。看護師を始め、医療従事者には男性よりも女性の方が多いので、必然的に女性を対象とした作り方になっているようです。
これから医療関係の求人サイトを作るなら
介護に代表されるように、医療系の仕事は「長時間労働できついし大変」といった負のイメージがどうしても付きまといます。
また、給料や福利厚生の少なさも度々取り上げられており、少子高齢化社会で医療費が増大している日本では、なかなか改善するのは難しいと言われています。
しかし、需要は多い業界ですし、人々が日々を健康的に過ごすためには医療業界の改善が必要です。改善するためには人材の増加が欠かせません。
ですので、医療系求人サイトというのは社会問題を解決する一助になるのではないかと思っています。
そこで求人サイトの作り方を工夫する必要があります。給料や福利厚生などの条件面をアピールするのではなく、「働きがい」をアピールするようにします。
具体的には患者のインタビューを掲載し、「医療従事者のおかげで助かった」という声があれば、人の役に立ちたいと思う求職者にアピールできます。
また、資格を取るまでの流れや学校・スクールの紹介なども有効です。直接求人応募に結びつく人材とはなりませんが、医療の仕事に興味を持っていただき、後の求職者を増やすという意味でも必要ではないでしょうか。
ですので、これからの医療系求人サイトには「イメージ戦略」が重要になってくるのではないかと思います。
医療系求人サイトは社会貢献になりやすい求人サイトのジャンルですので、やりがいを持って求人サイトの運営に取り組めると思います。
ファッション・アパレル業界
店舗販売、フロアマネージャー、バイヤー、デザイナー、販促プレスなど、ファッション関係の商品を扱う人達が働く業界です。
学生や女性に人気の業界で、華やかなイメージがあります。ファッション通販大手のZOZOTOWNに代表されるように、ネット販売との親和性も高いです。
ファッション関係の求人サイトは以下のとおりです。
海外サイトを思わすようなおしゃれなデザインが多いですね。これはファッションブランドのイメージから来ているのかもしれません。写真を多く使い、若々しさと清潔感でブランドを扱う企業を紹介しています。
サイトの作りとしてもブランドやそこで働く人をアピールしているので、ファッションに興味がある人は「自分も同じようになりたい!アパレル関係の仕事がしたい!」と思うかもしれません。
これからファッション・アパレル関係の求人サイトを作るなら
サイトのデザインは明るく・綺麗で若々しさを感じる一方、求人情報は地味(事務的)な求人サイトが多い印象を受けました。
もっと写真を掲載したり、動画を載せたりして、店舗のショーケースさながらの演出をしても良いと思うのですが、そのような求人募集をしているサイトはありません。(もしかしたら探せてないだけで、あるのかもしれませんが…)
求人サイトはあくまで求人情報が主役なわけで、イメージ戦略をするのなら求人募集ももう少し華やかであればもっと良いと思います。
これからはそんな「求人情報が主役なファッション・アパレル系の求人サイト」が出てくれば流行るのではないでしょうか。
有名ブランドだけでなく、中堅ブランドや個人ブランド、新進気鋭のデザイナーの方が集まる求人サイトも面白いと思います。
不動産業界
賃貸仲介、売買仲介、不動産営業、コンサルタントなど、住宅や建築に関わる仕事をする人達が働く業界です。
人間にとって衣食住は欠かせない要素となりますが、その”住(住まい)”をサポートする不動産業界は、人々の安定した暮らしを担う上で、重要な仕事を行います。
宅地建物取引士の資格に代表されるように、不動産関係の資格も豊富にあり、専門職としての意味合いも強い業界だと思います。
その不動産業界を対象とした求人サイトもいくつかあります。
暮らしや生活をイメージする緑系デザインが多いイメージです。 また、アルバイトよりも正社員や契約写真の募集が多い傾向です。
センチュリー21のように、不動産仲介業と並行してグループの求人サイトを作るのも面白いなと感じたので、専門サイトではありませんがご紹介しました。
独自の求人サイトがあることで人材募集にかかるコストを軽減でき、相乗効果としてメイン事業にもプラスに働くのではないかと思います。
これから不動産関係の求人サイトを作るなら
不動産業界も慢性的に人材不足だと言われています。原因は宅建などの資格が必要なこともさることながら、新人の社員教育や訓練に力を入れることが少ない傾向にあるようです。
いわゆる体育会系で「ガンガン売って行け!」と言った営業方針をしている企業が多く、近年のコミュニケーションを重視しない若年層の志向からは外れてしまっているのでしょう。
しかし、これはあくまで客観的なイメージに過ぎません。慢性的な人手不足は不動産業界で働く人たちも実感しているでしょうから、改革に乗り出そうとしています。
求人サイトはその「イメージを変える」お手伝いが出来るかもしれません。上記でご紹介した、いえらぶキャリアは電話やLINEで転職サポートを行っています。
宅建動画講座が視聴できるコンテンツも用意するなど、求職者に寄り添ったサポートを行っています。
人材支援を通じて不動産業界に貢献することを目的としている、時代の流れに合った求人サイトだと思うので、利用者も増加傾向にあります。
このように「人材不足」や「悪いイメージ」を逆手に取ってプラスに変えることで、新たなビジネスとしてし成功できるように思います。
クリエイティブ業界
Webデザイナー、システムエンジニア、イラストレーター、アニメーター、映像クリエイターなど、常に新しい技術や情報に触れ、スキルだけでなくセンスも問われる仕事です。
厳密に言えば、「Web業界」「映像業界」「アミューズメント業界」「広告出版業界」など、それぞれのジャンルに分けて分類するのですが、求人サイトの場合は一緒くたにして「クリエイティブ」とすることが多いため、このような分け方で紹介したいと思います。
クリエイティブ系の求人サイトは以下のとおりです。()内は主な取扱いジャンルです。
グレーやオレンジ系の配色を使用し、シンプルで落ち着いたデザインのサイトが多いように思います。
今やクリエイティブの仕事にはパソコンやインターネットの使用が欠かせませんので、Webデザイナーやプログラマーなどの、Web系の仕事も合わせて募集しているサイトが目立ちます。
paizaのようにスキルを元にしているのもクリエイティブな仕事を扱う求人サイトならではですね。求職者のみならず、企業としても経験者や質の高い人材を探すことができると思います。
これからクリエイティブ関係の求人サイトを作るなら
クリエイティブ系の仕事に就く人は他の業界に比べて求職者・企業ともに専門知識を要していることが多く、求人サイトの利用も難なくこなせる方が多い印象です。
それは運営者にとっても求人サイトの質を高める要因にもなります。より高度で、時代の流れに沿った求人サイトを演出することが出来るので、後発の求人サイトであってもアイディア次第では既存サイトに負けないサービス提供ができるでしょう。
求人サイトは基本的に企業が求人情報を登録して求職者がそれに応募すると言ったスタイルですが、クリエイティブ系の場合は制作物をWeb上に公開することができます。
これにより、企業は求める人材を探しやすくなり、スカウト機能の利用促進にも繋がると思うのですが、あまりそのようなコンテンツを用意している求人サイトはありません。
スキル項目の選択だけでなく、デザインやプログラム、写真や映像などの制作物の公開も合わせて行うことが出来れば、企業はより求める人材を探しやすくなりますし、求職者も好条件の就職先が見つかりやすくなるように思います。
また、Web制作・開発に関する求人サイトは多くあるものの、他のクリエイティブ業界に関する求人サイトは少ないようにも感じますので、今後はもっとクリエイティブ要素を絞った独自の求人サイトが生まれれば業界の活性化にも繋がるように思います。
求人サイトに不向きな業界にも活路を見出す
これまで6つの求人サイトがよく作られている業界をご紹介しました。これらの業界に限らず、求人サイトは様々な業界に対して利用することができます。
全職種・全業種の求人サイトと比べて専門サイト化することで、SEO(検索エンジン対策)やSNSでの評価も高くなり、質の高い求人サイトが作れるようになるでしょう。
ただ、そんな求人サイトでも不向きな業界というのも存在します。
ヤマト運輸の人材不足に関するニュース(参考:SankeiBiz)から、運送・宅配業界のドライバー不足が深刻化されていると話題になっていますが、求人サイトよりもハローワークや求人誌などを利用することが多いようです。
ドライバーに中高年層の方が多いのと、運転中にスマートフォンをいじるわけにもいかないので、ネットよりもリアルで職探しした方が良いといったところでしょうか。
ただし、大手求人サイトでも運送業界の求人情報は増えたイメージが有り、専門サイトも出てきています。
今までは求人サイトを利用することが少なかったとしても、このような専門サイトができることで、求人サイトの利用が促進されるように思います。
他は農業や漁業などの一次産業は難しいかもしれませんね。特に農業は平均年齢が65歳を超えており、高齢化問題や後継者不足が深刻です。
地方でネット環境が良くない場合も多く、求人サイトを使うというよりは身内の紹介や地域の繋がりで職に就く人が多いように感じます。
しかし、農業に関しても専門の求人サイトはあります。
あぐりナビ.comは求人情報の紹介だけでなく、お役立ち情報として農業という仕事そのものをアピールしています。「農業の現状を変えたい!」という意思が伝わってきて、熱意を感じます。
このように、これまでは求人サイトの利用に不向きだと思われた業界でも、経営者のアイディアで新たな活路を見出しています。
「自分がいる業界はあまりネットやパソコンを使わないから、求人サイトを作っても利用してもらえない」と思っている方でも、アイディア次第では現状打破に繋がるかもしれません。
「業界の人材不足を解消したい!」「新たな仕事の場、交流の場を作りたい!」と考えている意欲的な方は、ぜひ当方にご相談いただければと思います。