新しいビジネスを始める時は、サービスの値段(料金)をいくらにしたら良いか悩みますよね。相場を調べても各社で異なった料金設定をしているため、何を基準にプライシング(値決め)していけば良いか難しいです。
一方、スマホアプリやゲーム、Webサービスや便利ツールなど、私たちの周りには無料で利用できるものが溢れかえっています。特にWebサービスは無料で利用できるイメージが強いでしょう。
この無料を売りにしたビジネスモデルを「フリーミアム」と言います。基本的なサービスや機能を無料で提供し、その他の高機能な部分には課金が必要になるといった仕組みです。
実は、この無料をウリにしたフリーミアムはWebと相性が良く、多くの求人サイトでも導入されています。フリーミアムを活用したサービス展開をしていくことで、集客に繋がりやすくなり、ビジネスを成功へと導いてくれます。
しかし、ただ無料にすれば良いというわけではありません。フリーミアムを正しく理解してメリット・デメリットを把握しておかないと、フリーミアム戦略を行っても失敗してしまいます。
そこで今回はフリーミアムの仕組みを解説するとともに、求人サイトでどのように活用していけば良いかについてご紹介します。プライシングやマネタイズでお悩みの方はぜひご参考ください。
フリーミアムとは
フリーミアムという言葉は「フリー(無料)」と「プレミアム(割増)」を合わせた造語であり、2006年にアメリカのベンチャー投資家であるフレッド・ウィルソン氏によって提唱されました。
その後、アメリカの雑誌「Wired」の編集長であるクリス・アンダーソン氏が出版した「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」によって広まり、多くの企業で導入されました。
インターネットをしていると「無料で遊べる」「動画が見放題」などの広告を見かけることはないでしょうか?一見、怪しげな印象を受けますが、実際に無料で利用できるため、「本当にこれが無料でいいの!?」と思ったこともあるでしょう。
確かに無料で楽しむことはできますが、広告が邪魔だったり、制限があって繰り返し利用できなくなっています。これらを解消し、より快適にサービスを利用するためには、課金が必要になります。
このように「無料サービス」+「有料オプション」で構成されたビジネスモデルのことをフリーミアムと言います。「無料サービスの内容が気に入ったら課金をしてもらい利益を得る」というシステムのため、新規利用者を獲得しやすいのが特徴です。
フリーミアムはWebとの相性が良く、大小問わず様々な企業でフリーミアムを利用したビジネスが行われています。なぜ多くのWebサービスでフリーミアム戦略が行われているのでしょうか。
フリーミアムがWebと相性が良い理由
ビジネスを成功させるためには、まず利用者(ユーザー)を多く集めなければいけません。どんなに便利で素晴らしいサービスを提供していたとしても、ユーザーがいなければ事業として成り立たちません。
広告を出して集めることもできますが、莫大な費用がかかります。無料サンプルや試供品を配るという方法もありますが、これもコストがかかる上に、失敗すると在庫を抱えてしまいます。
ビジネスとして成立させるためには、なるべく少ないコストで多くのユーザーを獲得する必要があります。しかし、リアルを中心としたビジネス形態で無料提供するのはリスクが高く、なかなか行えるものではありません。
一方、Webなら比較的ローコストで集客することができます。Webサイトやコンテンツの提供であれば、在庫を抱える心配もありません。宣伝もネット経由で誘導できるため、非常に効率が良いのです。
そのため、フリーミアムを行うならWebビジネスがもっともベストな選択となります。
フリーミアム成功のポイント
フリーミアムを成功させるには、いかに多くのユーザーを有料オプションへ移行させるかにかかっています。利用者が全員無料でサービスを利用していては、コストがかかるだけでビジネスとして成り立たちません。
実際にフリーミアム戦略を実施する場合、どのくらいのユーザーが課金してくれるかを考える必要があります。これについては、「課金率5%ルール」という考え方があります。
全ユーザーのうち5%の課金してくれるユーザーがいれば、ビジネスが成り立つという考え方です。5%といえば少ないように感じますが、フリーミアムは集客力が高いため、全体を通してこの割合がひとつの目安とされています。
有料オプションの割合を増やすためには、ユーザーがお金を出してでも利用したいと思える価値のあるものにしなければいけません。それができないと無料会員の割合だけ増えて、ボランティアになってしまいます。
まずは価値のあるサービスを開発し、そこから機能制限を加えた「無料版」を提供します。無料版を利用するユーザーが多くなればなるほど、有料利用してくれる割合も増えるため、利益に繋がるでしょう。
求人サイトのフリーミアムと成功事例
フリーミアムといえば、動画配信やスマホゲームなどをイメージされる方が多いと思いますが、もちろん求人関連のビジネスでも活用されています。
多くの求人サイト・サービスでフリーミアム戦略を行っていますが、その中でも有名で特に注目のサービスをご紹介します。
ジョブセンス(現マッハバイト)
成果報酬型のビジネスモデルを求人業界で導入した先駆け的な存在です。ジョブセンスが登場して以降、多くの求人サイトで成果報酬型の料金プランを実施しています。
代表的なのは、人材を採用したら課金される“採用課金”と、求人への応募があったら課金される“応募課金”になります。成果が出てはじめて料金が発生するため、企業は無駄なく採用活動を行うことができます。
成果報酬型はスタートアップや小規模の求人サイトでも真似しやすく、リスクが少ないビジネスモデルです。まさに求人サイトに最適なフリーミアムといっても過言ではないでしょう。
indeed(インディード)
indeedは求人情報専門の検索エンジンであり、世界60カ国以上で利用されています。CM効果もあって知名度が上がっており、採用活動には欠かせない存在になっています。
indeedのフリーミアム戦略は主に広告が中心です。スポンサー広告といって、お金を出すことで自分が登録した求人情報を検索結果の上位に表示されます。検索エンジンで表示される広告をイメージするとわかりやすいかもしれません。
もちろん、無料でも掲載することはできますが、スポンサー広告が上位に表示されるため、課金の有無で人材獲得の機会が異なります。まずは無料で試して思ったほど応募がなければ有料に切り替えるといった使い方になるでしょう。
スポンサー広告はクリック1回毎に課金されます。そのため、アクセスが増えれば増えるほどクリックされる機会が多くなります。事業の発展とともに利益を上げられる仕組みになっています。
engage(エンゲージ)
engageは無制限で求人掲載が行え、自社の採用ページを作成したり、応募管理を行うことができる、採用支援ツールです。完全に無料で利用できることから、全国20万社以上が利用していると言われています。
engageのフリーミアムは有料オプションにあります。「スピード応募」というオプションでは、提携先のLINEキャリアで上位表示したり、自社サイトのエン転職に掲載されます。
無料だとindeedやGoogleしごと検索に掲載されるものの、基本的には自分で集客しなければいけません。しかし、有料オプションを利用することで集客力のある求人サイトに掲載してもらえるため、応募者の増加を期待できます。
すでにある求人サイトや提携先を有効活用したビジネスモデルだといえるでしょう。
CLUTCH(クラッチ)
自動車業界に特化した求人サイトです。CLUTCHの特徴は求人掲載から採用まで全て無料で行える点です。掲載期間も無制限であり、応募者を何人採用しても無料です。
CLUTCHのフリーミアムは有料プランにあります。無料プランと比べて求人情報に掲載される内容が異なるので、より企業の魅力をアピールできます。その他、サイト内の上位表示や注目求人枠にも掲載されます。
面白いのがリスティング広告を利用している点です。特別プランではYahooやGoogleの広告枠に出稿して、求人をアピールします。いわばSEM(検索エンジンマーケティング)をしていることになります。
このようなサービスを行っている求人サイトは少ないです。Webマーケティングの手法を求人ビジネスで取り入れた、まさに発想の転換からくるアイディアになるのではないでしょうか。
気をつけたいフリーミアムの落とし穴
多くの求人サイトで活用されているフリーミアムですが、誰でも成功できるということはありません。やり方を間違えると集客には繋がらず、失敗してしまう恐れがあります。
特に新しく構築する求人サイトでは注意が必要です。有名な求人サイトがフリーミアム戦略を行っているからと言って、同じように真似をしても思ったほど成果が出ないという場合があります。
そんな“フリーミアムの落とし穴”にハマってしまわないためにも、フリーミアムを活用するにあたって注意することをご紹介します。
有料オプションに価値がない
有料オプションはサービス内容に価値があるからこそ購入してもらえます。無料で利用できるサービスと比べて、明らかに質も内容も魅力的でなければいけません。ユーザーから見て差を感じなければ、お金を出すことはないでしょう。
例えば求人サイトは求人情報を掲載できるのが当たり前です。「無料だと1件しか掲載できないけど、有料だと複数掲載できる」といった有料オプションにしてもあまり魅力を感じないかもしれません。
それなら最初から無料掲載できる成果報酬型にして、応募や採用がある度に料金を請求するといった形のほうが利用されやすいです。求人の数も増えるので、求人サイトとしても売上の可能性が高まります。
無料の質を落としすぎない
いくら利益を出したいからと言って、無料サービスを粗末なものにしては本末転倒です。有料オプションの購入に繋がらないばかりか、無料で利用するユーザーも集まりません。
求人サイトなのにまともに求人が掲載できなかったり、掲載できても一部の情報しか公開されないようなサービス内容では、企業はもとより求職者の増加には繋がらないでしょう。
企業は時間というコストを払ってどの求人サイトを利用するか検討しています。コストに見合うだけの価値がないと、いくら無料であっても利用することはありません。無料の段階でもある程度の満足が得られるサービスにする必要があるでしょう。
無料から有料への移行はNG
元々、無料だったものを有料にするのは良くありません。顧客は損をした気持ちになり、離れてしまいます。マネタイズを成功させるには、サービスの改悪は絶対にしてはいけないのです。
例えば成果報酬型を実施していたのに、ユーザーが増えてきたので掲載料金を取る、といったやり方は駄目です。既存の顧客を失ってしまうばかりか、「あそこはがめつくなった」といった悪評に繋がります。
もし、新たな課金方法を追加したい時は、できるだけ今までの料金プランと併用するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。フリーミアム戦略をご紹介するとともに、求人サイトでの活用方法について解説してきました。あなたも実際にビジネスで導入する際のイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
求人サイトの場合、課金対象は求人を掲載する企業(BtoB)になりますが、企業もできるだけコストの増加は避けたいため、利用するサービスは慎重に選んでいます。そのため、無料で試せるのは大きな武器になります。
当サイトの場合、Web制作・システム販売に該当するため、フリーミアムとは言えませんが、「どんな求人サイトを作れるのか?どんな求人システムなのか?」ということを試せるデモサイトを公開しています。
他社はデモサイトを公開していなかったり、メールアドレスを登録しなければURLを教えてもらえませんが、当サイトはすべて公開しているため、お客さまが自由に試すことができます。
これも見方を変えればフリーミアムのようなものですよね。実際に、デモサイトを見てお問い合わせを頂く事が多いです。デモサイトがあると電話やメールでも画面を見ていただきながら説明できるため、商談がスムーズに進みます。
あなたの求人サイトでも「どうすれば利用してもらえるのか?」「ユーザーは何を求めているのか?」「無料でどんな価値あるものが提供できるのか?」を考えた上で、サービス展開してください。
フリーミアム戦略を活用し、ユーザーが求めるサービスが提供できれば、あなたのビジネスは大きく加速することでしょう。