サブスクリプション(サブスク)という言葉を聞いたことはないでしょうか?近年、Webメディアを中心によく耳にする機会も増えました。
サブスクリプションはWebビジネスと相性が良く、これまで動画配信サービスやアプリケーションの利用などで活用されてきました。しかし、最近では自動車や美容室などさまざまな業界にまで拡大しています。
今まさにブームといえるサブスクリプションを求人業界(人材業界)でも取り入れる場合、どのようなビジネスモデルを形成すれば良いのでしょうか?まだまだ事例が少なく、ピンとこない方も多いかもしれませんね。
そこで今回はサブスクリプションの基本を解説するとともに、求人サイト・求人ビジネスでサブスクリプションを導入したビジネスモデルついて考えていきたいと思います。
サブスクリプションとは
サブスクリプションとは、簡単にいえば「定額サービス」のことです。料金を支払うことで、一定期間サービスを受けられる仕組みです。別の言い方をすると「レンタル」と言えばわかりやすいかもしれません。
レンタルだと基本的には物の一時利用になりますが、サブスクリプションは“権利の利用”になります。権利の利用といえばわかりにくいかもしれませんが、例えばAmazonプライムやNetflixなどの動画配信サービスを思い浮かべてみてください。
動画配信サービスは従来のレンタルビデオのように、物を提供するわけではありません。
「月額○円で動画が見放題!」のように、お金を出すことで一定期間、映画やドラマをサイト上で視聴することができます。
これは物を借りているのではなく、「動画を見る権利を与えてもらっている」ということになります。利用者は一定期間、動画を見る権利を得るためにお金を払うのです。
現代はインターネットが発展したおかげで、映画館に行ったり、レンタルビデオ店に行かなくても自宅で手軽に映画を楽しめるようになりました。ただ映画を楽しむだけなら、「映画を見る権利」があれば十分です。
このように人々のニーズが「モノを所有する」から「必要な時だけ利用する」というライフスタイルに変化したため、サブスクリプション型のビジネスモデルが好まれるようになったのです。
サブスクリプションはWeb起業と相性が良く、起業家やスタートアップの間でも注目されています。まさに時代にマッチしたビジネスモデルだといえるでしょう。
サブスクリプションのメリット
サブスクリプションが起業に向いているというには、しっかりとした理由(メリット)があります。メリットを活かすことで、大幅な収益アップに繋がり、事業を拡大させることができるでしょう。
まずは、サブスクリプションを導入することで得られる事業メリットについて見ていきましょう。
どんなジャンルにも対応できる
サブスクリプションが様々な企業の間で広がっているのは、どんな業界・ジャンルにも対応することができるからです。制約が多いと参入障壁は高くなりますが、自由度の高いサブスクリプションであれば可能性は広がります。
サブスクリプションはIT業界やWebビジネスだけに限りません。他業界や実店舗・サービスがメインの企業でも活用することができます。
例えばトヨタが始めたサブスクリプションサービス「KINTO」では、車を売らずに貸し出すといった“車のサブスクリプション”を開始しています。3年間、月々の定額払いで1台の車を利用することができます。
また、美容サービスを提供する「MEZON」が始めたサブスクリプションでは、定額でシャンプー・ブロー、ヘアケアを受けることができます。厳選された提携先の美容室でサービスを受けることができるため、髪のお手入れが気になる方に好まれています。
このようにアイディア次第でWebに留まらず、様々な業界・ジャンルにて活用することが可能です。
新規顧客を獲得しやすい
月額数百円のように小額から始められるサービスだと、利用者の負担は少ないです。「商材を1万円で購入」する場合と、「月額1000円で利用できる」では、当然ながら月額制のほうが利用者の敷居は低くなります。
そのため、会社やサービスが有名ではなくても「ちょっと試す」ということをしてもらいやすくなります。良いサービスなら継続して利用すればいいし、そうでなければすぐ解約すればいいからです。
このような敷居の低さが利用者に支持され、集客のしやすさに繋がっています。たとえ「お試し利用」であったとしても、多くのユーザーを多く集めることで、サービスの認知度を向上させ、収益に繋げることができるでしょう。
安定した収入が見込める
売り切り型の商材は収入が安定しません。時期によって売上に波があるため、常に利益に追われることになります。自転車操業になることもしばしばあり、サービスの供給にも影響を与えます。
一方、サブスクリプションは月額制であるため、毎月決まった額の収入を見込むことができます。売れば売るほど収入が上がっていきますので、モチベーションも高まってくるでしょう。
収入が安定してくれば、それだけ投資もしやすくなります。新しい機能を追加したり、サポートの質を上げることができます。相乗効果で利用者も増えてくるようになり、さらなる増収を見込むことができるでしょう。
顧客データが取れる
利用者がサブスクリプションによって継続的にサービスを利用することで、さまざまな顧客データを収集することができます。
例えば顧客の男女比や年齢比を出すことができます。どちらかに偏りがあれば、より対象のユーザー向けにサービスを拡充することができるでしょう。そして、集客アップの広告宣伝やプロモーション活動にも役立ちます。
顧客データがないとターゲットを決められず、無差別に広告宣伝することになります。しかし、データがあることで、ターゲットを決められるため、無駄なコストを使うことはありません。
万が一顧客が減少した時でも、原因究明に役立ちます。データから何が悪いのか分析することできます。分析したデータを元に対策を立て、事業の悪化を阻止することができるでしょう。
サブスクリプションのデメリット
一方、サブスクリプションは良いことばかりではありません。デメリットも存在します。サブスクリプションを正しく活用するためにも、サブスクリプションのデメリットを把握し、計画的に実行しましょう。
サービス開始直後の売り上げは期待できない
Amazonやトヨタのように誰もが知っている巨大企業なら別ですが、大半の新規事業ではサービス開始直後の売上は期待できません。認知度の関係から、ユーザーを集めるのに苦労するでしょう。
例え小額だとしても、どんなサービスなのか理解されないと契約してもらえません。洋服やDVDなどモノを買う場合なら想像はしやすいですが、サブスクリプションは権利・体験を売っているので、その凄さを理解されないと契約してもらえないからです。
どんなに良いサービスでも利用者がいなければ月額契約を結べず、安定した収入には繋がりません。サービス開始直後は「どうやって認知してもらうか」がひとつの課題になるでしょう。
継続的なアップデートが必要
定額制は常に使い続けてもらうからこそ収益を得ることができます。使い続けてもらうためには、ずっと同じものを提供してはいけません。サービスのマンネリ化は即ユーザーの離脱に繋がるからです。
そのため、継続的なアップデートが必要になります。常に新鮮で魅力的なサービス・コンテンツを供給し続けることが認められます。求人サイトのようなWebサービスなら、デザインや機能の改善が必要になるでしょう。
ただし、継続的なアップデートはどの事業でも必要になることです。インプット・アウトプットを繰り返し、常に改善していかないと未来はありません。ですので、アップデートはどんなビジネスモデルでも必要な作業だといえるでしょう。
ある程度のコストが必要
サービスに価値がないと小額でも利用してくれないと説明しましたが、価値を形成するためにはある程度のコストが必要になります。特に事業開始前の初期投資には多大なコストが必要になるでしょう。
例えば求人サイトを始めるなら、デザインやシステム開発などWeb制作でコストが必要になるでしょう。求人サイトを公開するためのドメイン・サーバー費用や、集客するための広告宣伝費も必要です。
初期投資に数十万~数百万円かかっても、サブスクリプションで得られる金額は少ないです。回収するまで時間がかかるため、さらなる追加投資が必要になるかもしれません。
ただし、コスト=お金とは限りません。時間で置き換えることもできます。Web制作など専門的な作業はお金を払って他人に任せ、コンテンツ作成やサポートは自分がすることもできます。
サブスクリプションを成功に導くには、ユーザーのサービス継続力を高める努力が必要です。自身のスキルを最大限に活かし、息の長いコンテンツ作成を目指しましょう。
サブスクリプション3つの起業ステップ
サブスクリプションを活用したサービスを行う上で、大きく分けて3つのステップが存在します。ここではサブスクリプションを使った起業をする上で、必要な考え方を説明したいと思います。
1)サービスを作成する
まず、サブスクリプションの土台となるサービスを考える必要があります。サブスクリプションの中にも向き不向きがあります。どんなサービスでもサブスクリプションができるというわけではありません。
サービスを考える上でポイントになるのが「他社との差別化」です。他社もやっているような定額制サービスを行っても魅力は少ないです。あなたの事業ならではのサービスが必要になります。
例えば求人サイトのサブスクリプションといえば「月額○万円で求人掲載し放題」が考えられます。通常、ひとつの求人情報を掲載すると数万円のコストがかかりますが、定額で掲載し放題ならお得だと思いますよね。
しかし、このようなサブスクリプションをしている求人サイトはたくさんあります。同じことをしても目新しさがありません。あなたにある特技や技術をプラスαして、独自のサブスクリプションを形成する必要があります。
例えばあなたが文章を作成するのが得意であれば「求人原稿の作成代行」を加えても良いでしょう。時給や福利厚生など募集要項は書けても、具体的な文章は書けないという人が大勢います。原稿作成まで依頼できるなら、大きなセールスポイントになるでしょう。
あるいは「indeedやハローワークで宣伝します」として他社のサービスを実施しても良いでしょう。indeedはクローラーで自動収集していますが、手動のほうが早くて確実です。indeedの知名度は高いため、抱き合わせて自身のサービスを売ることもできます。
このように自分の強みを生かして、他社と差別化できるサブスクリプションサービスを作成することで、あなただけのビジネスモデルを形成することができるようになります。
2)価格設定
価格設定(プライシング)はビジネスを行う上で非常に重要です。高額だと利益増を見込める反面、質が問われるし、低額だと集客しやすくなる反面、まとまった利益が出るまで時間がかかります。
サブスクリプションですから、定額制で比較的安い金額にすると思いますが、利用者が購入しやすい価格設定であり、かつ収益としてマイナスにならない金額を設定する必要があるため、非常に難しいです。
適切な価格設定を行うために欠かせないのがリサーチです。ライバル会社を調査し、どのくらいの金額でサービスを提供しているか集計します。その平均と利用頻度を想定し、サブスクリプションに必要な月額料金を決めます。
例)求人サイトで求人掲載する時に必要な料金
A社・・・1万円
B社・・・3万円
C社・・・5万円
ライバル各社でこのような違いがあるとします。平均が3万円になるため、B社の金額と一致しますが、B社と同じ料金にしても先に始めたB社が有利なため、顧客には魅力的に映りません。
しかし、B社は1求人あたりの掲載金額だとします。そこで「月額3万円で求人掲載し放題」とすれば、B社のサービスを上回ります。月に2回以上、求人掲載する企業にはお得に映るため、顧客を呼び込むことができるでしょう。
※あくまでこの例はあなたのサービスがライバル会社と同等程度である場合の考え方です。新規サービスであれば規模や認知度の面からライバルに比べて劣るため、もっと料金を安くし、サービスを工夫する必要があるでしょう。
3)サービスの宣伝
どんなに良いサブスクリプションサービスであっても、人々に知ってもらわなければ意味がありません。検索エンジンやSNSでの宣伝はもちろん、地道な営業活動も必要になるでしょう。
この時に鍵になるのがフリーミアムの考え方です。お試しで利用してくれるユーザーを募り、月額課金へと誘導するのです。(なお、フリーミアムについては以下で詳しく解説しているため、ご参考ください)
求人ビジネスなら自ら企業に足を運んで利用をお願いしても良いと思います。新規求人サイトはとにかく求人情報がないので、時には「タダでも良いから掲載数を増やす」という考え方が必要になります。
そうした地道な宣伝活動を繰り返すことで、サービスの認知度は向上します。どこにメリットがあるサブスクリプションなのか伝わるようになれば、利用者は増え、収益は拡大していくでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。サブスクリプションの仕組みをご紹介するとともに、求人サイト・求人ビジネスで実施する場合の例もふまえてご紹介しました。
サブスクリプションの考え方は昔からありますが、言葉自体は最近使用されることが多くなりました。以下でご紹介するGoogleトレンドでも、2019年の後半から急激に検索数が増加しています。
求人ビジネスも昔からありますが、サブスクリプションのように新たなエッセンスを加えることで新しいサービスのようにアピールすることができます。たとえ新規参入であっても、注目されること間違なしです。
これから求人ビジネスで起業を考えている方は、ぜひトレンドであるサブスクリプション型のビジネスモデルを考えてみてください。流行りだしている今がチャンスです。