今年になってから連日のように運送業界に関する人手不足のニュースが報道されるようになりました。人手が足りないことで、配送料金の値上げにも繋がりそうです。
参考:「運転手が足りない」が約6割! 宅配便値上げの背景に深刻な人手不足と高齢化 | ネットショップ担当者フォーラム
以前からネットショッピングを利用してきた者としては、便利さが失われていくのかなという懸念とともに、「仕方ないのかな」という妥協の気持ちもあります。今までが便利すぎたんでしょうね・・。
ただ、今年になってから大々的にニュースになっているだけで、以前から人手不足は業界の問題だったように思います。上記の参考ページにも2014年頃から急激にグラフが伸びているので、ここ数年の問題だと感じます。
そこで「運送業界はどうやって求人しているのだろう?」と気になりました。10数年前は求人誌やチラシを使って募集していたでしょうが、今はネット中心のはずです。求人サイトで求人広告を掲載しているでしょう。
そう思って大手のヤマト運輸や佐川急便、日本郵便のサイトを見てきたのですが、そのいずれもが自社求人サイトを作っていました。
運送会社の自社求人サイトとは?
まずは以下のサイトをご覧ください。大手運送会社の求人情報です。
ご覧のようにトップページに全国地図があって、都道府県名をクリックすると、その地域の求人一覧が表示されます。そして詳細を見て応募出来るようになっています。まるで求人サイトのようです。
画像の配置や文章などは違うものの、それぞれ似たような求人サイトの作りになっていますね。フッター(ページ下部)にあるコピーライトを調べると、佐川急便と日本郵便は同じ求人システムを使用しているようです。
※ヤマト運輸はおそらく自社システムだと思います。ただし、情報量は他と比べて極端に少ないので、あまり活用していないのかもしれません。
求人サイトとしてはシンプルで情報量も少なく、画像も必要最小限です。求人詳細には目立つような画像もありません。会員機能もありませんし、お祝い金やスカウト機能などもありません。
しかし、求人サイトとして最低限の形にはなっていると思います。”自社サイトの中のいちコンテンツ”として考えるなら、このような形の方が管理しやすいのかもしれませんね。
自社求人サイトのメリット
それではどうして自社の求人サイトを作っているのでしょうか?運送会社大手が自社求人サイトを作っている理由について、特別な情報を見つけられませんでしたが、以下の点がメリットに挙がると思います。
コストを削減できるから
既存の求人サイトを利用すると、1回(または1人採用)につき、数万円以上のコストが発生します。それも大手運送会社となれば大量の人数を採用するでしょうから、広告代理店を利用することになると思います。
広告代理店を利用すると代理店に支払う手数料が必要になりますから、余計にコストが発生します。ですので、自社求人サイトを作り、コスト削減を図りたい思惑があるように感じます。
自由な募集が可能になるから
既存の求人サイトの場合、その求人サイトで提供している募集要項やフォーマットを使用することになります。業界特化型の求人サイトなら別ですが、そうでない場合はどうしても自社が求める募集要項にならない可能性があります。
しかし、自社で求人サイトを作っていると、募集要項は自由に作成できます。より必要な人材を獲得しやすくなります。
条件を比べられたくないから
既存の求人サイトで求人を出すと、どうしても同業他社と条件を比べられてしまいます。給与が高い・低い、休みが多い・少ない、クチコミが良い・悪いなど、数字で判断されることが多いです。
運送会社の場合、基本的には「物を運ぶ・扱う」ことが求める条件ですから、他社との違いを出しづらいです。その為、他社とは条件の比較が出来ない自社求人サイトの方が良いという面もあるでしょう。
名前が一般認知されている
本記事でご紹介している運送会社は知名度が高く、誰でも1度は利用したことがある会社だと思います。その為、集客に困ることはありません。
荷物のことを調べるついでにサイトを見たり、ブログや何かのニュース記事でサイトを見ることもあるでしょう。その時に自社求人サイトがあれば、職探ししている人にアピールできます。
より多くの人材を獲得したいから
本記事でご紹介している運送会社は自社求人サイトだけで求人しているわけではありません。既存の求人サイトも使っています。運送業界は特に人手不足が叫ばれていますから、多くの人材を獲得する必要があります。
既存の求人サイトだけだと求人掲載している時だけしか応募の対象になりませんが、自社で求人サイトを持っている場合、いつでも受け付けることができます。その為、より良い人材を多く獲得できるチャンスが増えます。
自社求人サイトに向く会社とは?
自社求人サイトにも会社形態によって向き不向きがあります。それを認識されずに求人サイトを作成すると、作成した後に「誰も利用してくれない」「思った人材が集まらない」と言った悪い結果が出るかもしれません。
そこでどのような会社は自社求人サイトを作っても良い結果が出やすいかについて説明したいと思います。
全国に支店がある
日本全国(あるいは海外)に支店がある会社には有効です。支店ごとに求人が必要になるでしょうし、給与や募集条件も異なると思います。自社求人サイトがあると、柔軟な募集要項を作成することができます。
また、求人サイトを通して全国の支店を紹介することもできます。会社のイメージアップに繋げることもできるでしょう。
アルバイトを募集している
アルバイトの場合は離職率が高くなりがちです。常に求人を出す必要があると思いますが、既存の求人サイトを利用しているとコストがかかります。ですので、自社求人サイトを作り、コスト削減を図るのに有効です。
アルバイトではなく、契約社員や準社員なども期限を決めて雇用するでしょうから、自社求人サイトで募集するのは有効だと思います。
Web担当者がいる
既にWebの担当者がいて自社サイトを管理している場合は有効です。求人サイトも同じように管理することができるので、新たに人材を雇ったり、会社のことを覚えてもらう必要がありません。
仮に現在はWeb担当者がいなくてもこれから雇うのでも問題はないと思います。当方のJOB-PLACEのようにCMSであれば、求人サイトの管理を簡単に行えるので、専門知識はそれほど必要ありません。
ただし、「今いる社員がカバーすれば良い」とするのは危険かもしれません。どうしても現在の業務に追われて、求人サイトの管理まで目が向かなくなります。
まともに管理できない状態で求人サイトを作り、多くの応募があると手に負えなくなります。そうすると会社のイメージダウンになりますので、出来ればWeb担当者は別にいたほうが良いでしょう。
どうやって自社求人サイトを作れば良いのか?
ここまでの説明で運送会社大手が自社求人サイトを作っている理由や必要性をなんとなくご想像していただけたのではないかと思います。
それでは実際にあなたの会社でも自社求人サイトを作りたい!と思った場合、どのようにして求人サイトを作れば良いのでしょうか?作成ポイントについてご紹介したいと思います。
求人システムは既存の物を使用する
佐川急便と日本郵便は同じ求人システム(サービス)を使用していますが、JOB-PLACEをはじめ、求人サイトが作成できるシステムは多く存在します。
その為、一からシステム開発するよりも、既存の物を使用した方がコスト面でも安定度の面でも良いでしょう。(ただし、デザイン変更や設定変更は必要です)
手前味噌ですが、JOB-PLACEの場合はカスタマイズ性にも優れており、当方にご依頼いただかなくてもご自身でレイアウトの変更や設定変更が容易に出来る形になっています。特別なWebの知識は必要ありません。
会員機能は省く
自社求人サイトには会員機能は必要ないと思います。と言うのも、会員機能は求職者が応募管理できるようにするためのものです。自社にしか応募しないわけですから、会員機能がない方が良いでしょう。
ただし、Web上でメッセージの交換を行ったり、応募検討している人にお知らせなどを連絡したいのなら、会員機能は使用した方が良いです。会員機能があることで、後のデータ分析にも活用できます。
求人が無い時でも情報提供する
ただ求人サイトを作るだけでは意味がありません。それは自社サイトにある求人サイトでも同じです。求人情報を掲載するだけでなく、求職者が見て参考になる情報を提供する必要があると思います。
たとえば「社員の声」を掲載しても良いと思います。実際に働いている社員の声や感想があることで、求職者も自身が働く姿をイメージできるようになります。
あるいは入社テストを行っている会社なら、Web上で過去問を掲載したり、簡単なテストが受けられるコンテンツを用意しても面白いと思います。
求人があまり無い時に何もしないとスカスカのサイトになって見栄えがよくありません。可能な限り、情報提供してサイトの質を保つようにしましょう。そうすることで、より良い人材が集まりやすくなります。
まとめ:自社求人サイトは可能性がいっぱい!
今回は運送業界を取り上げて自社求人サイトの必要性や作り方についてご紹介しました。運送業界以外にも人手不足な業界はたくさんありますので、自社求人サイトを作っている会社は多くあると思います。
ただ、求人サイト構築サービスを行っている身としては、今回取り上げた運送会社の求人サイトも「勿体無いなぁ」と感じます。3社とも似たようなデザイン・機能の求人サイトで、オリジナル性がありません。
これだけ人手不足だと言い続け、人材不足が業績悪化の原因にもなっているのですから、もっと求人や雇用に関して力を入れても良いのでは?と思うのです。
筆者が知らないだけでネット以外の媒体には力を入れているのかもしれませんが、やはり自社求人サイトがあるのなら、それをもっと活用した方が良いのではないか?と感じるのです。
求人や人材獲得というのは結局のところ、「人の奪い合い」だと思います。他社よりも自社で働くことのメリットを大々的に宣伝し、それを求職者に認知してもらうことで、より良い人材が集まります。
筆者としてもネットショッピングを長年利用してきましたから、運送業界に人手がいなくなり、業務縮小せざる終えない状況は好ましくありません。なんとかならないものかとニュースがある度に思います。
「自社求人サイトのメリット」にも記載しましたが、自社求人サイトは既存の求人サイトよりも、自社の思惑を反映しやすく、オリジナル性を出しやすい手法だと思います。
自社求人サイトの作り方や運営方法次第では、これまで以上に雇用を確保できるでしょうし、新たなビジネスにも繋がると思います。ぜひ運送業界にはもっと自社求人サイトを有効活用してほしいと思います。
今回は運送業界を中心に取り上げましたが、他の業界でも自社求人サイトを作っていたり、面白い使い方をしている場合は運営ブログでご紹介したいと思います。