2017年も残りわずかとなりました。1年が過ぎるのはあっという間ですね。毎年この時期になると1年で起きた出来事を中心に振り返るサイト、記事が多くなります。
当ブログは求人サイトという「求人」をテーマにしたブログになりますが、求人に関係する雇用・労働のニュースを中心に、2017年を振り返りたいと思います。
運送業界の人手不足が大問題になる
2017年は運送業界大手のヤマト運輸(クロネコヤマト)が人件費の高騰と人手不足を理由に、通販大手Amazonから撤退するかもしれないというニュースが大きく話題になりました。
参考:ヤマト運輸、「アマゾン即日配送」から撤退へ ドライバー負担軽減で検討 - 産経ニュース
結局、全面撤退ではなく「即日配送」など一部サービスを止めるにとどまり、ヤマト運輸がAmazonに値上げ交渉をすることによって、一応の沈静化は図られた形になりました。
参考:ヤマト、アマゾン向け値上げ合意 4割超で:日本経済新聞
しかし、この問題は2018年以降も続きそうです。ヤマト運輸とAmazonの問題だけでなく、運送業界全体の問題になっているからです。年々増加する宅配に対する需要に人材が追いついていません。
運送各社は人材確保のために時給アップなどの待遇改善に乗り出していますが、根本的な解決策にはなっていません。12月といえば運送業界は忙しさのピークを迎える時期ですが、人手不足に拍車がかかっているようです。
参考:宅配便危機、緊張の年末 荷物急増で4割再配達も:日本経済新聞
今後も宅配の需要は増え続けるでしょうから、どうなっていくのでしょうか。ネット通販をよく利用する者として、これからも注視していきたいと思います。
有効求人倍率がバブル期超えの高水準へ
人手不足は運送業界だけの問題ではありません。少子高齢化の影響で日本社会全体で人手が足りない状況です。
それを象徴するかのように求人に対する需要は高騰しています。2017年4月の有効求人倍率が1.48倍になり、バブル期の水準を超え、43年ぶりの高水準に達したとニュースになりました。
参考:求人倍率 バブル期超え 4月1.48倍、43年ぶり水準:日本経済新聞
完全失業率も2.8%と低く、雇用情勢は完全な「売り手市場」であることが数字の面で表されたわけです。この状況は2017年12月現在でも変わりません。最新のニュースではさらに上昇しています。
参考:10月の求人倍率1.55倍に上昇 43年9カ月ぶり高水準:日本経済新聞
筆者は30代なので「バブル期超え・43年ぶり」と言われてもあまりピンと来ませんが、自分の生活圏内を見ると求人に対する需要が高まっているのを実感しています。
飲食店ではほぼ必ずと言っていいほど人材募集のチラシが掲示されていますし、小売・サービス業でも同様です。スーパーでは店員の数に比べて圧倒的に人数が足りず、待たされることもしばしばあります。
このように日常生活の中でも企業の人手不足を実感することがよくあります。有効求人倍率が上がり、売り手市場であることに対しても違和感はなく、納得できます。
ただ、だからといって魅力的な求人が増えているわけではありません。雇用条件はだいぶ改善されてはいるものの、依然として低賃金・長時間労働・高負担が蔓延しています。
いくら少子高齢化社会とはいえ、急に日本の人口が減ったわけではないので、人手不足の原因は労働環境や条件に寄る部分が大きいでしょう。雇い主側のさらなる意識改革が求められます。
残業時間の上限が「月100時間未満」に定められる
政府は長時間労働による過労死が問題視される中、残業時間の上限を「月100時間未満」とする方向で、労使間との決着が図られる見通しとなりました。
参考:残業「月100時間未満」実現、企業にバトン:日本経済新聞
ただ、この「月100時間未満」という解釈も曖昧であり、さまざまな議論がされています。月100時間という数字だけ見てもかなりの激務に感じるので、時間はもっと短くするべきだとする声が出るのは当然です。
企業側としては「納期優先で繁盛期ならもっと働きたい」になるのかもしれませんが、労働者はそうではありません。人間ですから限界があります。そもそも残業しなければいけないこと自体が大きな負担になります。
今後は罰則を設けた規定・法律の導入も検討されているそうで、多くの企業で労働時間の見直しが迫られることになるのではないでしょうか。
外国人労働者に対する搾取が表面化する
現代の日本は深刻な人材不足という背景があるため、外国人留学生や労働者に対する需要は高まっています。以下の記事でも外国人留学生を採用したいという会社が増えていると紹介されています。
参考:国内での外国人採用重要度がさらに上昇か、外国人留学生や高度外国人材に関する企業調査結果を発表―ディスコ:IT人材ラボ
一方で外国人労働者を低賃金で働かせたり、違法な長時間労働を強いると言った劣悪な雇用条件が問題視されています。テレビでその実態が放送され、大きな問題になりました。
参考:時給400円で深夜まで奴隷労働 「メイド・インジャパン」は外国人技能実習生の犠牲の上に成り立っている | キャリコネニュース
こういったニュースは一部の話ではありません。技能実習制度を悪用し、外国人労働者を劣悪な条件で働かせることで、利益を上げている企業は増えているのです。
今後は技能実習制度そのものを改革する必要があると思います。企業に外国人労働者を斡旋する仲介業者に対しても取締を強化し、不当な条件で日本に連れてこられないようにする必要があるでしょう。
プレミアムフライデー導入
毎月末の金曜日に早帰りを促し、消費喚起と働き方改革のために導入されたプレミアムフライデー。導入当初はプレミアムフライデーに関連したさまざまなキャンペーンも行われていましたが、今ではすっかり沈静化しました。
失敗した最大の原因は「休めない」ことにあります。一部の企業では早帰りが実現できたものの、大多数の企業はそれが困難です。取引先や顧客がいますから、自分(自社)だけ業務を止めるわけにはいきません。
結局のところ「プレミアムフライデーとか関係なしに、いつもの週と同じように働く」方ばかりだったように思います。筆者も筆者の周りも気にしている人はいませんでした。
もし本当に働き方改革として行いたいなら、企業の自主性に任せるのではなく、休日化したら良かったと思います。そうすれば金・土・日と三連休になる会社も多いので、消費も伸びたのではないでしょうか。
制度としては上手く行きませんでしたが、考え方は悪くなかったと思います。少なくとも「働き方を変える・変えたい」という意思は国民に伝わったのではないでしょうか。
今後はもう少し日本社会の現状や国民の声に耳を傾けていただきつつ、より現代に合った制度や働き方改革に期待したいと思います。
インターンシップを導入する企業が増える
人材獲得競争が激しくなっている中、大学生に対してインターンシップを実施する企業が増えてきました。当ブログでも「今後はインターンシップ向けの求人サイトが増えるかも」とした記事を書きました。
この記事は8月のニュースを参考に書いた記事ですが、12月の現在もインターンシップは積極的に実施されているようです。
インターンシップを行うことで学生はその企業の仕事を体験することができますし、企業も学生の関心を集めて採用に繋げることができます。より良い人材を獲得できるチャンスが増えます。
企業と学生双方にとってメリットはありますが、懸念もあります。インターンを理由に低賃金で働かせ、搾取する企業がでてくる可能性があります。以下の記事では「インターンのまやかし」として報道されています。
参考:インターンのまやかし…ただのブラックバイト&学生搾取が横行、無給で社員と同じ労働を強制 | ビジネスジャーナル
外国人技能実習生もそうですが、制度の裏を書いて悪用する企業も少なくありません。こういった企業を減らし、一人でも多くの労働者が適切な環境で働けるよう、監視と法整備が求められることでしょう。
シニア世代を雇用する企業が増える
60歳以上のシニア世代を雇用する企業が増えています。シニアの方たちも働く意志のある方が多いので、定年退職後に再雇用したり、アルバイトで雇用する企業が増えてきました。
当ブログでも敬老の日に「シニア世代向けの求人サービスは可能性があるのではないか?」と言った主旨の記事を書きました。
日本は少子高齢化ですから、若者の数は少なくてもシニア世代は多くいます。人手不足で経営が圧迫されるのなら、シニア世代を積極的に採用し、売上を伸ばそうとする企業が増えても不思議ではありません。
シニア世代が活躍できることで、自分が年を取っても働き先があるといった安心感にもつながります。転職も積極的に行えるようになるのではないでしょうか。シニア向けの求人サービスも増えることに期待したいです。
まとめ
以上、主な雇用・労働に関するニュースを取り上げました。他にもさまざまなニュースはありましたが、総じて言えるのは「人手不足が原因に寄るニュースが多かった」ということです。
人手不足だから残業時間が増えたり過重労働をさせるようになり、人手不足だから利益も上がらない。従業員に十分な給与を払うことができず、低賃金で働かせることができる人材を求めるようになってしまう。
すべての問題は人手不足が原因としてあります。ただ、いくら原因が分かっても人手不足がすぐに解消されることはないでしょう。現在の社会の仕組みを見直して、少しずつ解決していくしかないと思います。
また、有効求人倍率が上がり売り手市場になっているといっても、今ひとつ求人業界が活性化しないのは、魅力的な求人が少ないからです。時給や給与が上がり、待遇が改善されれば働き手も増えます。
そこで2018年以降は企業も”覚悟”が必要になるのではないでしょうか。待遇を改善させ、良い人材を雇用できる環境を整え、人材が流出しないように努力しなければいけないと思います。
そして待遇改善を行う企業を応援するため、求人サイトも改革する必要があるでしょう。より良い人材が適切な企業に就職できるためのサービス・支援が求められます。
これまでは求人情報だけ提供していれば良しとされていましたが、コンテンツやサイト設計を見直し、求職者にとってわかりやすく価値のある情報を提供しなければいけません。
企業も求人サイトも時代に合わせて変革し、労働者にとって最適な条件で雇用できる環境を整えられれば、人手不足も解消していくようになると思います。そうすることでよりよい社会が形成されるようになるのではないでしょうか。
2018年は雇用・労働・求人関係の良いニュースがたくさん見られるよう期待しつつ、当サイトでもより良い求人サイトを構築するためのサービス提供ができればと思います。