昨日、日本マクドナルドが9月5日~10月31日に店舗スタッフの採用強化を目的としたキャンペーン「マックなら、大丈夫。」を実施するということで話題になりました。
人手不足が大きな経営課題となる飲食業界の中で、主婦やシニア層が安心して働ける環境をアピールし、継続的な人材の採用と育成を目指す。
「マックなら、大丈夫」マクドナルド、主婦の採用強化 - ITmedia ビジネスオンライン
マクドナルドを含め飲食業界も人手不足が深刻な業界です。店舗での求人はもちろん、求人サイトを使った採用活動はしょっちゅう行っています。自社で求人サイト(採用サイト)を作っているところも多いです。
求人サイト構築サービスをしている筆者としても気になるニュースだったので、「どんなキャンペーンなのかな?」とマクドナルドのサイトを見に行ったのですが、残念ながらあまり良い印象は抱きませんでした。
そこで本キャンペーンを分析するとともに、求人サイト構築に詳しく、Webディレクションを行っている筆者がプロとしての観点から「こうだったら良かった」と思うことを記事にしたいと思います。
採用キャンペーンなのに公式サイトでPRしていない
マクドナルドのサイトを見に行くと、9月6日現時点で特にキャンペーンの宣伝は行っていません。普通に商品の宣伝をしているだけです。「キャンペーン」というコンテンツがあるものの、そこには項目がありません。
もしかしたら本日以降に何か変更するのかもしれませんが、9月5日に発表されたキャンペーンだけに、これが最新系だと思います。(もし変更があったらこの記事を更新します)
トップページ中央下にあるスライドメニューをクリックしていくと、「クルー体験会」なるバナーがありました。ニュースで発表されていた期間なので、これがキャンペーンの一環なのかもしれません。
実際の店舗ではPOPを用意したりチラシを配っているのかもしれませんが、公式サイトでは大々的に宣伝していないので、少し残念でした。プレスリリースを出すのだから、公式サイトも変えるべきだと思うのですが・・。
そして同様に公式Twitter(@McDonaldsJapan)でもつぶやいていませんでした。商品宣伝用のTwitterだから仕方ないのかな?と思いきや、歌手のw-indsの情報をリツイートしていたり、他企業とのコラボを紹介しています。
というわけで、商品に限定したTwitterではないようですが、なぜつぶやかないんですかね?「あなたも○○バーガーを一緒に作りませんか?」的なつぶやきなら、商品の宣伝と相まって問題ないと思うのですが。
なお、公式のFacebookページ(@McDonaldsJapan)もあるのですが、こちらでも宣伝はしていませんでした。もしかしてあまり力を入れていないキャンペーンなのでしょうか?
ただ、公式サイトやSNSで大々的に宣伝はしていないものの、マクドナルドのアルバイト情報サイトはあります。探すのに苦労はするものの、採用活動を強化しているのは事実のようです。
アルバイト情報サイトは充実しているが残念な部分も
マクドナルドはアルバイト募集用の採用サイトを作っています。イラストや写真が豊富で情報量も多く、大企業の採用サイトとして最低限必要なコンテンツが用意されています。
ただ、仕事の雰囲気やクルー(アルバイトスタッフ)の様子は分かるものの、積極的に人材を採用したいような作りではなく、受動的な印象を受けます。読み物系サイトのような作りになっており、求人アピールが少ないです。
サイトもPC・モバイルと分けた作りで、レスポンシブ対応していません。履歴書をPDFでダウンロードして手書きするなど、IT化していないのも気になりました。(この辺は会員登録する仕組みではないので、仕方ないと思います)
そしてなにより女性をメインにしすぎな印象を受けます。これはSNSなどでも指摘されていたのですが、女性や主婦を対象とした採用キャンペーンは男女雇用機会均等法に抵触しかねないそうです。
もちろん、募集する時に年齢や性別を指定して募集しているわけではないので問題ないかもしれません。が、筆者は男性なので少し気になりました。マクドナルドに行くと男性のクルーもいるんですけどね。
アルバイト情報サイトをどう改善すれば良いか?
それでは具体的にどう改善すれば良いと思うのかについて意見を書きたいと思います。なお、マクドナルドは「気軽に応募してほしい」ことが目的だと感じるため、求人サイトによくある会員コンテンツ案は省きます。
■履歴書をWebフォームで
Webから応募できるのに、履歴書をPDFでダウンロードして手書きするのは違和感を受けます。Web応募が可能ということは採用管理システムのようなものがあるはずで、面接希望日があるので、応募店に連絡されるはずです。
だったら、Web上から履歴書が作れてそのまま応募できる形にすればよかったのではないでしょうか?Web操作が苦手な人用に履歴書を用意する意図は分かるのですが、応募フォームが簡単すぎるのは気になりました。
■希望条件で応募するフォームを最適化する
おまかせ!マックという、マクドナルド側が最適な店舗を探すコンテンツを用意しています。希望条件を登録してマクドナルドが条件に合った店舗を紹介してくれるそうです。
これ自体が応募フォームのような形になっているので悪くはないと思うのですが、「働きたい曜日・時間で代わりに店舗を探す」のなら、自動化できるのではないでしょうか?
マクドナルドの採用管理システムが全国で連携されているかがわからないので、あくまで一方的な意見ですが、郵便番号(または都道府県)と働ける曜日・時間を選択したら、候補店が出てくるほうがわかりやすく早いです。
また、どうせフォームを用意するなら「どんな仕事をしたいのか?」という理由も選択できた方が良いですね。フォームももう少しEFO(入力フォーム最適化)を意識した作りにできると思います。
■クルー体験会申し込みを最適化する
クルー体験会を申し込む手続き・UI(ユーザーインターフェース)の操作が冗長すぎる気がします。他では地図を用意しているので、地図からタッチする仕組みや、カレンダーを用意した方が良かったのではないでしょうか?
■クルーの感想コンテンツを作る
「やっぱりマックが好き!」というコンテンツでクルーの紹介はしています。これはこれで参考になりますし、良いコンテンツだと思います。
しかし、他にも働くクルーは一杯います。別に写真や名前を出さなくても、「性別・年齢」のみの、ひとこと感想でも良いと思います。
マクドナルドの店舗に行くとそのようなスタッフの感想やコメントが書かれているボードを見かけることがあります。なのに、Web上でその情報がないのは勿体無いなと感じました。
■店舗の募集案内のページをもっと詳しくする
店舗の募集案内のページがほぼテキストのみで簡素化されています。せっかくこのような採用サイトを作ったのなら、写真もあったほうが良いと思います。
また、募集案内のページにある説明自体も少ない印象です。いくらアルバイトとは言え、個々の店舗で採用に関してもっとアピールできることがあるのではないでしょうか?
ページデザインも全体的に文字が小さく、見づらいです。GoogleMapがメインであるかのような配置も違和感を受けます。
■ハンバーガーの作り方動画を掲載する
マクドナルドの顧客からすると、「どうやってハンバーガーを作っているのか?」は気になります。注文して数分で出来てくるし、以前は60秒で提供するキャンペーンも行っていました。
そこで「ハンバーガーの作り方動画」なるものがあれば面白いなと思います。動画はYouTubeのリンクで良いでしょう。(YouTubeに公式アカウントがあるようで、そのような動画を実際に公開しています)
もし、作り方を紹介している動画があるなら、「自分もクルーとして採用されたら、こうやって作るんだ」と参考になるでしょう。
■メールやアプリの通知で情報を受け取る
求人サイトにはよくメールで求人情報を受け取る機能があります。これは複数企業・職種が集まっている求人サイトだからできることで、企業の採用サイトには必要ないかもしれません。
ただ、マクドナルドは専用のアプリを公開しています。筆者もスマートフォンにインストールして利用しているのですが、そこで採用情報も連携すれば面白いなと感じました。
マクドナルド愛があるからこそ改善して欲しい!
マクドナルドのファンの方は「偉そうに言いやがって!」と思うかもしれませんが、批判や批評が目的ではありません。筆者もマクドナルドの一ファンとして「こうだったら良いのにな」と思う気持ちで書きました。
マクドナルドほどの大企業は世間に与える影響が大きいです。今回のニュースもSNSをはじめ、様々な人が自分の意見をつぶやいていました。
筆者はこのニュースを見た時、「それは素晴らしい!さすがマクドナルド!」と嬉しい気持ちになったのですが、公式サイトを見に行ったら大々的に宣伝しているわけでもなく、採用サイトを探すのに苦労しました。
SNSを見ても「良いことをした」という意見がある一方、主婦バイトに対して否定的な意見を持つ人も多く、「主婦=アルバイト雇用=安く使いたい」との思惑を感じるという意見が少なくなかったです。
ネットの意見がすべてではありませんが、軽視して良い意見でもありません。特に子育て世代の主婦を対象とするなら、なおさらネットの意見には耳を傾けるべきではないでしょうか?
人材不足解消や労働改革を目的とした採用キャンペーンを行うのは良いのですが、どうせやるならもっと頑張ってほしかったなぁ、というのが本音です。
なお、求人サイト構築に興味がある方は自分が利用しているお店や興味がある会社の採用サイトを見て「自分ならこうする」というのを考えてみるのも面白いと思います。新たなアイディアが生まれるかもしれません。
人は自分が好きなお店ほど、もっと変わって欲しい・改善欲しいと願います。嫌いなら何も言いません。好きだからこそ意見が出せるのです。企業もそういった意見を大事にして、今後の経営戦略に反映してほしいと思います。